スマホ新法施行で何が変わる? 「安全な庭」の開放で、危険なアプリをDLするリスクも

スマホ新法施行で何が変わる? 「安全な庭」の開放で、危険なアプリをDLするリスクも

●欧州の法律と比べると慎重な態度?

日本のスマホ新法は、ヨーロッパのデジタル市場法(DMA)を参考にしています。

DMAとは、大企業が市場を支配することを防ぎ、新規参入を可能にすることで、デジタル市場における競争を促すことを目的とする法律です。

ただ、DMAと比べると、日本のスマホ新法の方が、指定事業者(AppleやGoogle)に対する規制に慎重な姿勢を見せている部分もあります。

たとえば、アプリストアを介さず、ウェブサイトから直接アプリをダウンロードする「サイドローディング」については、セキュリティリスクを考慮して、ヨーロッパとは違い義務化の対象外とされています(「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律の概要」公正取引委員会、2024年9月)。

また、これはDMAでも同様の規定はあるのですが、プラットフォーム事業者側に「正当な理由」がある場合、指定事業者側が外部の事業者の参入に対して様々な制限を課すことが可能となっています。

この「正当な理由」の具体例がどのようなものかは、まだ法律の規定も裁判例もなく分からない状況ですが、参議院経済産業委員会の附帯決議(2024年6月11日)では、以下のように示されています。

「アプリストア等の開放により、有害・違法なアプリ等が提供されるリスクが高まることがないよう、正当化事由に関する具体的な考え方等を示す指針の策定・運用に当たっては、関係行政機関、関係団体、指定事業者を含む民間事業者や消費者・ユーザー代表等の知見を十分に活用し、セキュリティの確保、プライバシー保護、青少年保護、消費者保護等が確実に図られるものとなるよう取り組むこと。」(附帯決議「四」)

したがって、セキュリティの確保やプライバシー保護、未成年者や消費者の保護などを目的とする場合は、他社ストアを制限したり手数料を設定したりすることが「正当な理由」として認められる余地があります。

ただし、どのような場合にこれらの場合にあたるのかは不透明な状況です。

●今後どうなる?

施行されたばかりで先行きは不透明です。良い方向に行く可能性も、悪い方向に行く可能性もあります。

スマホ新法は、指定事業者に制限を課して自由競争を促すものなので、うまくいけば私たちユーザーの選択肢が広がり、より安く、より便利にサービスを利用できるようになるでしょう。

ただし、指定事業者側からすると、長年コストをかけて作り上げてきたシステムを開放することには抵抗感があるかもしれません。たとえば、自社以外のアプリストアの健全性について自社がコストをかけて審査を徹底するインセンティブは働きにくく、他社のアプリストアで配信されるアプリの信頼性をどう確保するかが今後の課題になりそうです。

また、詳しい解説は省きますが、スマホ新法はOS(基本システム)に関する規制も含んでいます。たとえばiPhoneとAirPodsやApple Watch、Macとのスムーズな連携、いわゆるAppleエコシステムなどについても、他社に開放するよりも日本での提供の制限などを行う方向に向かう可能性は今のところ否定できません。

ただし、事業者側が「技術を開放するとセキュリティリスクが高まる」として、それが「正当な理由」に当たると主張すれば、現状とあまり変わらない状況が続くかもしれません。

今後、指定事業者側が主張する「正当な理由」が、本当にユーザー保護のためのものなのか、それとも競争相手を排除するための口実なのかも争われるかもしれません。

(参考資料)※本文中に挙げたもの以外
「日本社会のDXと法」(法律時報97巻2号、2025年8月、日本評論社/巽智彦)
「聴ける!実用法律書 改訂新版 図解で早わかり 独占禁止法・景品表示法・下請法」(2025年11月、三修社/森公任)

監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

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