出生数66万人台…来年は丙午で激減?令和ママ「それでも産みたい」→少子化の背景にある“同い年婚”

出生数66万人台…来年は丙午で激減?令和ママ「それでも産みたい」→少子化の背景にある“同い年婚”

2026年の出生動向に「丙午」の影響はあるのか?【専門家】に聞いた今後の見通し

今回の調査結果および今後の出生動向について、人口問題や地方創生に詳しい株式会社日本総合研究所 調査部 主席研究員・藤波 匠氏にお話を伺いました。

今回の丙午で「出生数の激減」は起きない。その決定的理由は「親の年齢」

藤波氏は、「1966年のような丙午ショックが再現される可能性は低い」と指摘します。最大の理由は「親世代の年齢構造の変化」です。


藤波氏:「前回の丙午(1966年)の親世代は平均25〜26歳と若く、迷信を理由に『1年待つ』余地がありました。しかし、現在の親世代は平均30歳前後。妊孕性(妊娠するための力)や年齢リスクを強く意識する世代にとって、迷信のために妊娠・出産を1年先送りするような時間的な猶予はない、というのが現実です。そのため、今回の丙午では産み控えをする人は少ないと考えられます」


実際に今回のベビーカレンダーのアンケート調査では、第1子出産時の平均年齢は「30.7歳」となっており、「理想としていた年齢より遅かった」と回答した人が半数以上を占める結果となりました。


また、2025年の動向を見ても、前回起きたような『前年への駆け込み出産』の波は起きておらず、このことも大幅な出生数減少が起きにくい根拠だと言います。

2025年の出生減は「底打ち」の兆し。カギは「2.8年のタイムラグ」

足元の2025年の出生動向について、藤波氏は「減少傾向は続いているが、急減フェーズからは脱しつつある」と分析します。


藤波氏:「2025年の出生数は前年比で減少するものの、減少幅はやや落ち着く見込みです。注目すべきなのは、2024年時点のデータで見ると、結婚から第1子出産までの平均期間が約2.8年となっている点です。これは、今の日本における平均的な出産のタイミングを示しています」


コロナ禍において結婚が先送りされた反動により、現在の婚姻数は一時的に下げ止まり、ほぼ横ばいで推移しています。藤波氏は、こうした時期に結婚した夫婦が、結婚から第1子出産までの平均期間である約2.8年を経て、2025年後半から2026年にかけて出産期を迎える点に注目します。



藤波氏:「丙午による心理的なマイナスがあったとしても、婚姻数が下げ止まり横ばいとなった時期に結婚した世代の出産が重なり、2026年はむしろ出生数の減少幅が緩和される可能性もあります」

真の少子化要因は「同い年婚」増加の背景にある経済不安

妊娠・出産を左右する、経済状況と女性の社会進出の相関

今回のアンケート調査で、「最初に妊娠・出産を決めるにあたり、最も不安に感じたこと」を尋ねたところ、「金銭面」が32.0%(299人)で最多となりました。次いで「自身の年齢や体力」24.8%(232人)、「仕事やキャリア」10.5%(98人)と続き、経済や生活設計に関わる不安が上位を占めています。


藤波氏は、この背景にある構造変化として「経済状況と女性の社会進出」の相関を指摘します。高度経済成長期には「年上の男性が専業主婦を支える」モデルが主流でしたが、経済成長の鈍化とともにその構造は崩れました。

藤波氏:「経済状況が悪化すると、女性も自立して家計を支えることが求められます。女性も男性と同じように社会に出て経済的な基盤を築くためには、相応の時間が必要です。その結果、結婚のタイミングが後ろ倒しになり、男女ともに結婚年齢が上昇。男性も、妻となる女性にある程度の経済的な地位を望むようになってきていることもあり、同世代と結ばれる『同い年婚』が増加しました。近年では同い年婚が最も多くなっています」


こうして増えた「同い年婚」は、経済的に対等なパートナーシップである一方、「2人で働いて初めて生活水準が維持できる」という前提があります。そのため、景気の先行きが不透明になると、「今の生活を維持できるか」「片方が働けなくなったらどうするか」という不安に直結しやすく、結果として妊娠・出産に踏み切れなくなる傾向が強まっていると藤波氏は分析しています。


藤波氏:「少子化を進めているのは、経済不安と将来設計の難しさにあります。迷信のような一時的な要因よりも、日々の暮らしや将来の見通しが立てにくいことこそが、妊娠・出産の大きな壁になっています」

丙午の先にある、本当の課題

藤波氏は今後の出生動向や課題について次のように語ります。


藤波氏:「出生数について、大きな回復を見込める状況ではありませんが、子育て支援策の拡充や賃上げの動きなど、環境面は以前に比べて確実に改善してきています。こうした変化が下支えとなり、出生率や出生数は横ばい(下げ止まり)に向かう可能性もあります。重要なのは、若い世代の経済的不安を一つずつ取り除いていくこと。周囲の声に左右されるのではなく、自分たちのライフプランを軸に判断できる社会であるべきだと思います」


かつて大きな話題となった丙午ですが、結果的には同級生が少ないことによる受験や就職競争の緩和といった側面もありました。迷信そのものが、個人の人生に不利益をもたらす根拠は、現在では見当たりません。


妊娠・出産において自分自身のタイミングを何よりも大切にし、周囲の雑音にとらわれることなく、夫婦ふたりにとって最良の時期を選ぶことこそが、現代における自然な選択と言えるのではないでしょうか。

<お話しを伺った専門家>

日本総合研究所 調査部 主席研究員 藤波 匠(ふじなみ たくみ)氏

藤波 匠(ふじなみ たくみ)氏

日本総合研究所 調査部 主席研究員

1992年、東京農工大学大学院農学研究科修士課程修了。東芝、さくら総合研究所を経て、2001年に日本総合研究所に入社。山梨総合研究所への出向などを経て、2025年より現職。専門は人口問題、地方再生など。著書に『なぜ少子化は止められないのか』『子供が消えゆく国』『人口減が地方を強くする』(いずれも日本経済新聞出版)などがある。


<ベビーカレンダー編集長 二階堂美和>

ベビーカレンダー編集長 二階堂美和

来年は、60年に一度の丙午を迎えます。丙午は少子化に影響するのではないか——そんな専門家の見解を目にすることもあります。


そこで今回、ベビーカレンダーのママたちに調査を行いました。結果は、迷信に振り回されることなく、むしろその言い伝えを前向きに捉え、自分たちの意思で出産を考えようとする声が多数を占めるものでした。不安な時代だからこそ、根拠のない言い伝えに立ち止まるのではなく、「自分たちはどう生きたいか」「どんな家族を築きたいか」をまっすぐに見つめる——。その姿勢の強さとしなやかさに、深い感銘を受けました。


一方で、今回の調査や藤波先生のお話、そして弊社アンケートの結果から見えてきた少子化の本質的な課題は、迷信ではなく、経済的な不安や、出産・育児と仕事を両立しづらい社会の仕組みそのものでした。


子どもを持つことが、キャリアや人生の選択肢を狭める理由にならない社会。それは、当事者の努力だけで実現できるものではなく、周囲や社会全体の理解と意識の変化があってこそ、初めて近づけるものだと感じています。


私たちメディアにできることは、育児をしている人だけでなく、すべての人が「出産や子育ては社会全体の出来事なのだ」と感じられるよう、伝え続けることです。そのために、これからも多くの方を巻き込む記事やコンテンツを届けていきたいと考えています。このリリースが、少子化を遠いニュースではなく、「自分たちの社会の話」として考えるきっかけになれば幸いです。


今後もベビーカレンダーは、妊娠・出産・子育てに向き合うすべての人が、安心して自分たちの選択をできるよう、信頼できる情報を届けていきます。


(※1)本文中の出生数(66万7542人程度)は、厚生労働省公表の人口動態統計速報値(在留外国人等を含む)をもとに、確定値(日本に住む日本人のみの出生数)ベースでの着地を想定した推計値です。速報値と確定値は集計対象が異なるため、例年一定の差が生じます。


【調査概要】
調査タイトル:「丙午(ひのえうま)」と妊娠・出産に関するアンケート
調査方法:インターネットリサーチ
調査期間:2025年12月8日(月)〜12月12日(金)
調査対象:株式会社ベビーカレンダーが企画・運営しているサービスを利用した方
調査条件:妊娠中・育児中の20〜40代女性(935人)
【出典について】
本調査内容を転載される場合は、出典が「株式会社ベビーカレンダー」であることを明記していただきますようお願いいたします。

※AI生成画像を使用しています

提供元

プロフィール画像

ベビーカレンダー

『ベビーカレンダー』は、赤ちゃんの成長に合わせて一人ひとりに必要な情報を、毎日個別にカスタマイズしてお届けする、妊娠・出産・育児の情報サイトです。 妊娠してから1歳までのお子さまを持つかたに向けて、毎日新しい、役立つ情報をお届けします。 日めくりカレンダーを毎日めくるように、『ベビーカレンダー』を、ぜひ毎日ご活用ください。