
「うちの子に限って」そう思っていたが、もし娘がいじめをしていたら?そんな事実を知らされた時、親はどうすればいいのだろうか。今回は、いじめの加害者と被害者、双方の親の視点から描いた、しろやぎ秋吾さん(@siroyagishugo)の漫画『娘がいじめをしていました』を紹介する。いじめた本人でもいじめられた側でもなく、何があったか直接は知らない保護者の視点で淡々と描かれる2つの家族が、いじめと向き合っていく物語だ。
■まさか自分の子どもが…



いじめる側でもいじめられる側でもなく、その親の視点で描くという斬新な観点の本作。描くきっかけについて尋ねると、作者のしろやぎさんは、編集者から「いじめっ子の親の話」をセミフィクションの題材として提案され、自分でも読んでみたいと思い描き始めたと語る。
しろやぎさんには小学生の息子と娘がおり、「この本の主人公のように『まさか自分の子どもが…』と思う一方で、いつそうなってもおかしくない」と感じたそうだ。加害者、被害者、第三者の親がそれぞれ何を考え、どんな悩みを抱え、どう結論を出すのかを考えてみたいと思ったという。
SNSで人気のある怖い話や家族の話とは異なり、本作はフィクションだ。しかし、「登場人物の心情をできる限りリアルにするため、妻や編集者と何度もネームを作り直した」と、リアリティの追求にこだわった。制作に行き詰まった際には、SNSで「子どもがいじめをしていた」「いじめられていた」という体験談を100件以上募集し、親の心情の参考にしている。
■「一見普通」の家庭に潜むいじめと、作者の願い
「ストップいじめ!ナビ」の須永さんに話を聞いた際、加害行動につながるストレッサーについて知ったという。しろやぎさんは、「子どもが抱えるストレスの要因を具体的に描いてしまうと、どこかの1事例として読まれてしまい、共感しにくいと考えました。できるだけ何に問題があるのかわからないように、一見『普通』の家庭で起こった出来事にしようとしました」と、作品の意図を語った。
加害者が何をしたのか、被害者が何をされたのか、明確に描かれていないのがポイントだ。「子どものいじめの実態についても、できるだけ読者にも隠しました。1話ずつ親の視点と同じ様に悩みながら、疑いながら読んでもらいたいと思いました」と、読者にも考察を促す構成にこだわった。
保護者説明会での、当事者ではない第三者の親の目線が怖かったという読者の声について、「有名人の過去のいじめ問題やネットの晒しあげなど、いろいろと思うことがあってこのシーンができました。ただ、ネットへの告発が悪だとも思わないです。そうするしかなかった状況があるのだと思います」と、自身の考えを述べた。
※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。製品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

