虫垂炎の受診の目安と検査、診断

虫垂炎の受診する目安を教えてください
痛みがだんだん強くなって歩くのがつらい、寝返りや咳で痛みが増す、発熱や吐き気を伴う、といった変化があるときは受診を検討しましょう。
特に、今まで経験したことがない強い腹痛が続く場合や、冷や汗が出るほどの痛みがある場合は、夜間や休日でも受診を急いだほうが安全です。自宅で市販の痛み止めを飲んでしまうと、症状が一時的に和らいで診断が遅れるおそれがあるため、自己判断での服用は避けたほうがよいとされています。
虫垂炎で受診したらどのような検査を行い診断しますか?
虫垂炎が疑われる場合には、血液検査で白血球やCRPという炎症反応の値を調べます。多くの患者さんではこれらが高くなりますが、発症してすぐの時期や高齢の方ではあまり上がらないこともあります。
さらに、腹部の超音波検査やCT検査を行い、虫垂が太く腫れていないか、周囲に膿のたまりや腹膜炎の所見がないかを確認します。成人ではCT検査が診断に大きく役立ちますが、被ばくを避けたい妊婦さんや小児では超音波検査を優先します。また、尿検査で尿路結石や尿路感染症の有無を調べ、妊娠の可能性がある女性では妊娠検査や婦人科の診察も行います。
虫垂炎の治療法を教えてください
虫垂炎の治療は、抗菌薬による保存的治療と、手術による外科的治療に大きく分けられます。炎症が軽く、膿のたまりや穿孔がないと判断された場合には、入院して点滴の抗菌薬を使い、絶食と安静で経過をみる方法が選択されることがあります。最近の研究では、非複雑な虫垂炎の一部で抗菌薬のみでも症状が改善することが示されていますが、一定の割合で後から再発して手術が必要になることが報告されています。
より根本的な治療は、炎症を起こしている虫垂を切除する手術です。現在は、お腹に数か所の小さな穴を開けて行う腹腔鏡下虫垂切除術が広く行われています。開腹手術に比べて傷が小さく、術後の痛みが少ないことが利点です。ただし、膿が広がっている場合や、腸の状態が悪い場合などには、開腹手術が選ばれることもあります。
どの治療を選ぶかは、虫垂炎の程度、膿のたまりの有無、患者さんの年齢や合併症、仕事や生活への影響などを総合的に考えて決めます。医師からそれぞれの治療法のメリットとデメリットについて説明を受け、納得したうえで方針を選ぶことが大切です。
編集部まとめ

虫垂炎は、若い世代に多いものの、どの年代にも起こりうる急性の腹痛の原因です。典型例では、みぞおちやおへそのあたりのはっきりしない痛みから始まり、時間とともに右下腹部へ痛みが移動し、発熱や吐き気を伴うようになります。しかし、すべての方が教科書どおりに症状を示すわけではなく、高齢の方や小児、妊娠中の方では症状がわかりにくいこともあります。
自己判断で胃腸炎や疲れだと思い込んで様子をみていると、虫垂に穴が開いて腹膜炎になり、入院や重い治療が必要になる場合があります。一方で、早めに受診して診断がつけば、適切なタイミングで抗菌薬治療や腹腔鏡手術を受けることができ、その後の経過も良好なことがほとんどです。
いつもと違う腹痛が続く、痛みが右下腹部へ移って強くなってきた、発熱や吐き気を伴う、といったサインがあるときは、早めに医療機関を受診してください。この記事の内容が、虫垂炎を疑うべきタイミングや受診の判断に役立てば幸いです。
参考文献
『急性虫垂炎』(独立行政法人国立病院機構 奈良医療センター 健康だより)
『急性虫垂炎の診断に関する資料』(厚生労働省)
『Appendicitis』(StatPearls Publishing)

