狭心症は心電図でわかるの?Medical DOC監修医が狭心症の心電図波形・心電図経過や何科へ受診すべきかなどを解説します。

監修医師:
佐藤 浩樹(医師)
北海道大学医学部卒業。北海道大学大学院医学研究科(循環病態内科学)卒業。循環器専門医・総合内科専門医として各地の総合病院にて臨床経験を積み、現在は大学で臨床医学を教えている。大学では保健センター長を兼務。医学博士。日本内科学会総合専門医、日本循環器学会専門医、産業医、労働衛生コンサルタントの資格を有する。
「狭心症」とは?
狭心症とは、心臓に酸素と栄養を送る冠動脈の血流が一時的に不足し、心筋が虚血状態に陥る疾患です。冠動脈が狭くなることで起こります。具体的には、冠動脈の内壁にLDLコレステロールが沈着してプラークを形成したり、血栓が付着したりするためです。これにより、労作や精神的緊張など心筋の血液需要が高まる状況で、心臓への血液の需要と供給のバランスが崩れて、さまざまな症状が起ります。典型的な症状は、前胸部の痛みや圧迫感です。中には、この症状に加えて、左肩、腕、顎に症状が放散することもあります。発作は、安静にすると、十数分以内で自然に軽快することが多いですが、症状が強く持続する場合は心筋梗塞への移行も考えなければなりません。診断には、心電図、運動負荷試験、冠動脈造影などが用いられます。治療は、生活習慣の改善、薬物療法、必要に応じてカテーテル治療やバイパス手術が行われます。
狭心症の心電図波形
狭心症は虚血性心疾患の1つであり、発作時に心筋虚血の心電図波形を呈します。心筋虚血を起こした際の代表的な心電図波形を以下に詳しく説明いたします。
異常Q波
異常Q波とは、心筋梗塞などによって心筋が壊死し、その部位の電気的活動が失われた結果として出現する異常な心電図所見です。通常、Q波は心室中隔の興奮を反映するごく小さな陰性波です。したがって、幅が狭く、深さも浅いのが一般的となります。しかしながら、異常Q波は、幅が0.04秒(1mm)以上に延長し、かつ深さが同じ誘導におけるR波の4分の1以上となるのが特徴です。異常Q波は、V1~V4など前胸部誘導を中心に出現することが多いです。特に、陳旧性心筋梗塞の診断においては重要な所見であり、心筋虚血が過去に不可逆的なダメージへと進行したことを意味します。予後判定や治療方針決定において大きな意義をもちます。
一方で、狭心症は冠動脈の一時的な血流不足により心筋が可逆的な虚血に陥る病態であり、心筋は壊死には至らないのが特徴です。そのため、狭心症の発作時に認められる心電図所見で、異常Q波が出現することは一般的にはありません。もし、異常Q波が確認された場合は、心筋梗塞や他の心筋障害を疑う必要があります。
STの上昇
ST上昇は、心筋の虚血や損傷を反映する重要な心電図所見のひとつです。特に、心筋梗塞や冠攣縮性狭心症に特徴的にみられます。心筋梗塞は、冠動脈が動脈硬化や血栓により急激に閉塞し、心筋への血流が長時間途絶することで心筋が壊死する疾患です。一方、冠攣縮性狭心症は、冠動脈に一時的な強い収縮(スパズム)が起こり、心筋への血流が急激に減少することで発症する疾患です。冠動脈自体に高度な狭窄がなくても起るのが特徴と言われています。
診断的には、連続する2つ以上の隣接誘導で一定以上のST上昇が認められることが重要です。具体的には、胸部誘導(V2・V3)では男女や年齢によって基準値が異なり、0.15〜0.25 mV程度以上の上昇が目安とされます。その他の誘導では0.10 mV以上の上昇が有意とされています。
ただし、狭心症においてST上昇は通常みられません。発作時は、むしろ水平型あるいは下降型のST低下が主に認められ、これが典型的所見とされています。
冠性T波
冠性T波とは、心筋虚血や梗塞によって出現する特徴的なT波変化を指す心電図所見です。心筋が酸素不足に陥ると、心臓内の電気的活動に異常をきたし、その結果として、T波の波形が変化します。心電図上では、左右対称性で陰性T波として観察されることが多く、特に前胸部誘導(V1〜V4)において現れることが多いです。
冠性T波は、心臓以外の要因でも起きる非特異的なT波変化と異なり、診断的意義が高いです。特に、陳旧性心筋梗塞の確認や虚血範囲の推定に有用と言われています。ただし、狭心症においては心筋虚血が一過性かつ可逆的であるため、冠性T波は一般的に認められません。狭心症ではむしろST低下や軽度のT波変化が主な所見であり、冠性T波が持続して存在する場合には心筋梗塞など不可逆的な虚血障害を疑う必要があります。

