「狭心症」を疑う「心電図の波形」にはどんな特徴がある?【医師解説】

「狭心症」を疑う「心電図の波形」にはどんな特徴がある?【医師解説】

狭心症の心電図経過

狭心症は、発作からの時間経過により変化するのが特徴です。経時的な心電図変化の詳細を以下でご紹介いたします。

発症前

発作前の心電図は、多くの場合明らかな異常を示さず、発作がなければ正常範囲であることが一般的です。しかし一部の症例では、発作に先行して心筋虚血の前駆所見が認められることがあります。具体的には、一過性にT波が増高したり、尖鋭化したりする変化です。これらの所見は非特異的であるため、単独で診断することにはなりませんが、臨床症状や経過と併せて評価することで狭心症の存在を示唆する手がかりとなることがあります。

急性期

急性期には、心筋虚血を反映した典型的な心電図変化を認めます。代表的な所見は、水平型または下降型のST低下であり、虚血の強さや範囲に応じてT波の陰性化や平坦化を認めることも少なくありません。一方、冠攣縮性狭心症では一過性のST上昇が出現し、通常の狭心症とは異なるパターンを呈します。

回復期

発作中に認められたST変化が速やかに基線へ戻るのが特徴です。ただし、T波に関しては発作消失後もしばらく陰性や平坦な形で残存することがあります。しかしながら、時間の経過とともにこれらの変化も改善し、多くの場合は正常化します。

慢性期

発作がなければ心電図は正常所見を示すことが多く、特徴的なST変化やT波異常は認められません。そのため、安静時の心電図検査のみで狭心症を診断するのは難しいのが現状です。

「狭心症の心電図」についてよくある質問

ここまで狭心症の心電図について紹介しました。ここでは「狭心症の心電図」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

心電図以外に狭心症の検査法について教えてください。

佐藤 浩樹 医師

狭心症の診断では、心電図が基本となりますが、通常行われている心電図検査では特徴的な所見が得られることは少なく、補助的な検査が必要となることが多いです。代表的検査は、運動負荷試験で、トレッドミルやエルゴメーターを用いて心拍数を上昇させ、心臓により血液が必要な状態を起こし、狭心症の有無を診断します。症状と心電図変化により評価します。加えて、心エコー検査では、壁運動異常の有無や心機能を非侵襲的に確認でき、ストレス心エコーによって負荷時の虚血評価も可能です。さらに、心筋シンチグラフィやPETでは放射性同位元素を用いて心筋血流分布を画像化し、虚血範囲や重症度を把握できます。近年では、冠動脈CTが発達し、冠動脈の形態的狭窄やプラーク性状を外来にて、非侵襲的に観察できるようになりました。最も確定的な検査は冠動脈造影です。直接的に冠動脈の狭窄部位や重症度を評価でき、治療方針の決定にも直結します。これらの検査を組み合わせることで、狭心症の診断精度が高まり、適切な治療選択につながります。

配信元: Medical DOC

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