健康診断の血液検査では、中性脂肪以外にもいくつかの脂質関連の数値が測定されています。これらの項目を総合的に見ることで、身体の脂質バランスがどのような状態にあるのかをより詳しく把握できます。検査結果の見方を理解することで、自分の健康管理に役立てられるでしょう。

監修医師:
濱木 珠恵(ナビタスクリニック新宿)
北海道大学医学部を卒業後、国立国際医療センターにて研修。
虎の門病院、国立がんセンター中央病院で造血幹細胞移植の臨床研究に従事。都立府中病院、都立墨東病院での血液疾患診療を経て、2012年にナビタスクリニック東中野院長、2016年よりナビタスクリニック新宿院長に就任。
貧血外来や女性内科などで女性の健康をサポート。
【専門・資格・所属】
血液内科、貧血、女性内科、内科一般
日本血液学会 専門医
日本内科学会 認定医
健康診断で測定される脂質検査項目
健康診断では中性脂肪以外にも、血液中の脂質バランスを総合的にチェックするために、複数の脂質関連項目が測定されます。これらを総合的に評価することで、より正確な健康状態の把握が可能です。ここでは、脂質検査の代表的な指標とその見方を解説します。
LDLコレステロールとHDLコレステロール
血液中のコレステロールには、中性脂肪のほかに性質の異なるLDLコレステロール(悪玉コレステロール)とHDLコレステロール(善玉コレステロール)があります。LDLコレステロールは多すぎると血管壁に蓄積して動脈硬化を進行させる要因となるため、120mg/dL未満が望ましいとされています。
一方、HDLコレステロールは血管壁に蓄積した余分なコレステロールを肝臓へ運ぶ働きがあり、40mg/dL以上が基準値です。中性脂肪が高いとHDLが低下しやすく、LDLが増加する傾向があります。この組み合わせは動脈硬化の進行を加速させるため、注意が必要です。これらの数値は相互に関連しているため、単一の指標だけでなく、総合的に判断することが重要です。
Non-HDLコレステロールとLH比
近年注目されているのが、Non-HDLコレステロールという指標です。これは総コレステロールからHDLコレステロールを差し引いた数値で、動脈硬化を引き起こすすべての悪玉コレステロールを反映します。150mg/dL未満が望ましい値とされ、食後採血でも評価できるという利点があります。またLDL以外にも、血管に悪影響を及ぼす中間型リポタンパク(IDL)や超低比重リポタンパク(VLDL)などをまとめて評価できる点が特徴です。
かつて動脈硬化のリスク評価の指標としてLDL-C/HDL-C比(LH比と呼ばれることもあります)が用いられることがありました。この比率は2.0以下が望ましいとされていますが、現在ではNon-HDLコレステロールがより重視されています。中性脂肪値とあわせてこれらの指標を確認することで、総合的な脂質管理が可能になります。検査結果を理解し、必要に応じて医療機関で詳しい説明を受けることが大切です。
まとめ
中性脂肪の改善は、短期間では実現しません。しかし、日々の食生活や飲み物の選択、適度な運動習慣を積み重ねることで、徐々に数値の変化を感じられる方もいらっしゃいます。健康診断で異常を指摘された場合は、放置せず早めに対処することが重要です。再検査や精密検査が必要な場合は、医療機関の指示に従い、必要に応じて専門の医師の診察を受けてください。中性脂肪は生活習慣の鏡ともいえる指標です。今日からできる小さな改善を始めることで、将来の健康リスクを減らせる可能性があります。
参考文献
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
厚生労働省「e-ヘルスネット 中性脂肪 / トリグリセリド」
国立循環器病研究センター「脂質異常症(高脂血症)」

