亮の不倫を何とかやめさせたい真帆と和馬。和馬からの説得を3か月ほど続けますが効果はなく、ついに真帆が直接説得に動きます。「大切なものは?」の問いに「妻子だ」と答えた亮。ひとまず真帆は一通りの忠告をして帰りました。
不倫男の心の中
昔から断れない性格だった。頼られれば応えたくなるし、周りにはいつも人がいてほしい。優柔不断とも言える俺にとって、しっかり者の千鶴は誰よりも魅力的に見えた。
「亮と結婚できて幸せ」
結婚したばかりのころ、彼女からそう言われて俺も幸せだった。カノンが生まれてからは尚更だ。そう、俺は妻子を愛している。だから強気に言い寄られて始まった常連客との不倫関係も、やめなければならないことだとずっと考えていた。続けてしまうのは、自分の弱さのせいだとわかっている。
心身ともに刺激ある不倫関係から、ドラッグのように抜け出せない。もうちょっと…あとほんの少しだけ、甘い時間を味わってから……。
浮気相手とドライブ中、激しい雨が
今日も俺は不倫相手のサヤを車に乗せていた。もう知り合いに会わないため遠出をするようになり、今も山道を走っている。本日の天気は大雨で警報も出ていたが、彼女と合わせられる日程と時間が今しかなかった。でも頭の中にずっと、先週真帆ちゃんから受けた厳しい眼差しがある。
(待ってくれよ。ちゃんと別れるから。もう少し、遊んだら…)
振り払うように、オーディオのボリュームを上げる。ラジオに設定していたせいで、色気もない天気予報が車内に響いた。
『各地で大雨警報が出ています。土砂災害にご注意ください──』
「やだ、この雨やばいんじゃないの」
ラジオ情報を受けてサヤが窓の外を見る。そのうちバケツをひっくり返したような雨に変わり、運転する俺も怖くなった。
「事故らないでね」
「もちろんだよ。スリップしたらやばそうだよな」
そう答えながら、もしも…と考えてぞっとした。

