生死を分かつ瞬間、見えたのは…
今、事故を起こしてしまったら、こいつと最期を共にするのか?そんな俺を千鶴とカノンはどう思う?冷たくこちらを見る彼女たちの視線を想像して、総毛立つ。真帆ちゃんから言われた言葉を思い出した。
──何かあった時、後悔するのは亮さんなんですよ──
その時、前輪のタイヤが滑って、カーブを曲がり切れなくなる。コントロールできない車体が、崖のあるガードレールに近づいた。
「きゃあ!危ない!」
「わあ!」
全力でブレーキを踏む。幸いガードレールギリギリで車は止まり、事なきを得た。顔が青ざめ、心臓は激しく鳴る。助手席のサヤの非難めいた声も届かないほどだ。
「ちょっと危ないじゃない!」
呆然とする頭。死を覚悟した瞬間、とてつもなく千鶴とカノンに会いたくなった。それなのに、隣にこいつがいては会えないと思って絶望を感じた。…俺はなんて愚かで、馬鹿で、アホで、みっともないんだ。
視界がぼやける。外界で降っているような大きな雫が、目元から零れ落ちた。
「え…亮?」
「このままじゃダメだ…」
引き気味のサヤを気にもせず、俺はただ泣いて、後悔した。
あとがき:シタ夫の分岐点
亮視点の今回のお話は、彼の心境変化の大きなターニングポイントになったようです。魅惑的で刺激ある不倫関係をずるずると続けていた亮。やめなければならないとわかっていても、やめられない。中毒者のようになっていた彼の目を覚ましたのは、生死にかかわる体験でした。
いざという時、会いたい相手に会えなくなる状況を自ら作っていたと、ようやく気づいたようです。後悔して涙を流す彼は今後、どのように動くのでしょうか。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。
記事作成: hiiro
(配信元: ママリ)

