PTSDの治療中に自分でできることと周りの方が気を付けること

PTSDを克服するために自分でできることはありますか?
専門的な治療と並行して、自分自身で行うセルフケアもPTSD克服の助けになります。まず、睡眠や食事、運動といった基本的な生活リズムを整え、体調管理に努めましょう。
規則正しい生活はストレスに対する心身の抵抗力を高める土台です。また、一人で抱え込まずに信頼できる家族や友人に気持ちを打ち明けたり、同じような体験を持つ人の自助グループに参加してみたりするのも有効です。
さらに、趣味やリラックスできる活動に意識的に時間を充ててください。好きな音楽や読書、軽い運動などで気分転換を図りましょう。深呼吸や筋弛緩法、マインドフルネスなどのリラクゼーション法も日常的に練習し、フラッシュバックやパニック時に落ち着きを取り戻す対処法として活用しましょう。
一方で、アルコールや薬物、過度の喫煙やカフェインに頼って気分を紛らわせる対処は逆効果です。これらは一時的に楽になったように感じても長期的には心身の状態を悪化させ、依存のリスクも高めます。ストレス発散のつもりでも飲みすぎや薬の乱用は避け、代わりに健全なセルフケア習慣を身につけましょう。
PTSDの人が生活のなかで気を付けることを教えてください
PTSDの症状と付き合いながら生活するうえでは、過度なストレスや引き金となる刺激をできるだけ避ける工夫が必要です。例えば、事件や災害のニュース映像を繰り返し視聴すると不安が高まりやすいため、ニュースとの付き合い方は時間を決めて情報量を制限し、代わりに読書や散歩などほかの活動で気分転換するよう意識してみましょう。
また、先述のとおりアルコールやカフェインの過剰摂取、喫煙は症状を悪化させるおそれがあるため控えることが望ましいです。生活リズムの維持も重要で、毎日できるだけ決まった時間に起床・就寝し、バランスの取れた食事をとり、軽い運動を習慣にするといった心がけが安定したメンタル状態につながります。
治療中であれば、医師やカウンセラーの指示どおり通院や服薬を続けることも大切です。調子がよい日と悪い日があるかもしれませんが、無理をしすぎず自分のペースで少しずつ生活の幅を広げていくようにしましょう。学校や職場への復帰も焦らず段階的に行い、必要に応じて周囲に配慮してもらうことも検討してください。
自分自身で「休むべきときは休む」「助けが必要なときは人に頼る」といったセルフマネジメントを心がけることが、長い目でみて症状と付き合う際に役立ちます。
身近な人がPTSDになった場合に、周囲の人が気を付けることはありますか?
ご家族や友人など周囲の方の支えは、PTSD患者さんの回復にとって大変重要です。まず心がけたいのは、この障害への正しい理解と共感です。
PTSDの症状は本人の意思や性格の弱さで起きているのではなく、誰にでも起こりうるものだということを認識しましょう。周囲の方は、安全で落ち着ける環境を整え、焦らずに本人のペースを尊重する姿勢で接することが大切です。
話を聞く際も、「早く忘れて前向きになって」などと無理に励ますようなことは逆効果になりえます。むしろ「自分は一人ではない」と感じてもらえるよう寄り添い、否定せずに傾聴することで心の支えとなることを目指してください。
トラウマ体験について話すかどうかは本人の意思を尊重し、話してくれた場合には「よく打ち明けてくれたね」と受け止めましょう。治療継続の後押しをしたり、通院に付き添ったりと、できる範囲で構いませんので実際的なサポートも役立ちます。
編集部まとめ

PTSDは決して特別な方だけの病気ではなく、誰でも強いショックを経験すれば陥る可能性のあるありふれた心の反応です。しかしながら、適切な治療とサポートによって改善しうる病気でもあります。逆に放置すれば長期化し、うつ病など二次的な問題を招くおそれがあるため、思い当たる症状がある場合はできるだけ早めに医師らに相談することが肝心です。
治療には数ヶ月以上の時間がかかることもありますが、焦らずに取り組めば症状の克服や大幅な軽減は十分可能です。症状が落ち着いた後も油断せず、再発予防のため日々のセルフケアや定期的なケアを続けていきましょう。家族や周囲の理解や協力も患者さんを支えてくれます。予防と早期発見・早期治療が何より大切です。正しい知識に基づく適切なケアと支援を通じて、PTSDという心の傷を乗り越え、再び安心して生活できる日常を取り戻していきましょう。
参考文献
『PTSD』(こころの情報サイト)
『PTSD の薬物療法ガイドライン:プライマリケア医のために』(一般社団法人 日本トラウマティック・ストレス学会)

