VDT障害(VDT症候群)は、スマートフォン・パソコンなどのIT機器を使用した作業によって生じる様々な症状のことです。
IT機器を使う機会が増えた現代のライフスタイルは、目が疲れやすい生活習慣ともいえ、多くの人が目の疲れや不調を抱えています。
目の疲れ・不調をはじめとするVDT障害(VDT症候群)は全身症状を招く恐れがあり、単なる目の疲れと軽視するのは危険です。
現代人が注意したい VDT障害(VDT症候群)について、症状や原因など詳しく解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「VDT障害(VDT症候群)」になりやすい人の特徴はご存知ですか?【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
荒井 宏幸(医療法人社団ライト みなとみらいアイクリニック)
防衛医科大学校卒業。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院などで近視矯正手術・白内障手術を中心に診療経験を積んだ後、2010年に現職の「医療法人社団ライト」理事長に就任。医学博士。日本眼科学会認定眼科専門医。みなとみらいアイクリニック主任執刀医、クイーンズアイクリニック院長、防衛医科大学校非常勤講師。自身もレーシック手術を受けている。講演・出演・著書など多数。
VDT障害(VDT症候群)の症状と原因

あまり聞き慣れないのですがVDT障害(VDT症候群)とは何ですか?
VDT障害(VDT症候群)は、長時間のVDT 機器を使った作業によって生じる様々な症状のことです。
VDTはVisual Display Terminalsの頭文字を取ったもので、液晶などの画面標示機器とキーボード・マウス・タッチ画面などの入力機器による情報端末を指します。普段私たちがよく使うスマートフォン・パソコンもVDT機器です。
IT機器の発展によって、私たちの生活はとても便利なものになりましたが、その分VDT作業も長時間になりつつあります。その結果、身体的・精神的な疲労・不調を感じる人が増加傾向にあります。
VDT障害(VDT症候群)は、目の症状だけではありません。体や心に影響を与える特徴があります。
テクノストレス眼症と呼ばれることもあります。
VDT障害(VDT症候群)の症状を教えてください。
よくみられる症状は、眼の症状・体の症状・精神的な症状と大きく分けて3つです。
目の症状では、目の乾き(ドライアイ)・眼精疲労・目の痛み・視力低下・充血などが挙げられます。
体の症状では肩・腕・首を中心とした症状が多く、肩こり・首こり・腕の痛み・しびれ・倦怠感・背中の痛み・腰痛などです。
精神的な症状では不安感・イライラ・憂鬱な気分などが挙げられ、その結果、不眠・鬱症状につながる場合もあります。
何が原因で発症しますか?
DT障害(VDT症候群)は、いくつかの要因が複合的に絡み合って発症します。その主な要因は長時間のVDT作業です。
長時間集中してスマートフォン・パソコンなどのディスプレイを見続けると、まばたきの回数が減りドライアイにつながります。そして、目の乾燥によってより疲れやすい状態となり、眼精疲労につながります。
肩こり・首こり・痛み・しびれなど体の不調の原因は、VDT作業による長時間の同じ体勢です。長時間同じ体勢をとり続けることで、血行不良・筋肉疲労が起こり体の不調につながります。
精神的な不調は、目・体の不調がストレスとなり心の異常につながるものと考えられます。また、長時間のVDT作業により他人との関わりが減ったことによる孤独感も心の不調の原因の1つです。
VDT障害(VDT症候群)になりやすい人の特徴を教えてください。
VDT障害(VDT症候群)は、現代人の誰しもが陥りやすい症状の1つといえます。
1日4時間以上パソコン・スマートフォンを使用する
仕事でパソコン・スマートフォンを使用する機会が多い
長時間同じ姿勢で過ごすことが多い
ドライアイ
メガネ・コンタクトが視力に合っていない
これらに当てはまる人は、よりVDT障害(VDT症候群)になりやすい可能性があります。VDT障害(VDT症候群)は、目の疲れ・目の乾きが様々な症状を引き起こす最初のきっかけです。
つまり、目を酷使していて疲れやすい環境・生活の人はそれだけVDT障害(VDT症候群)になる可能性が高くなります。
VDT障害(VDT症候群)は子供でも発症するのでしょうか?
子供でもVDT障害(VDT症候群)を発症する可能性はあります。特に現代の子供は、テレビゲーム・スマートフォンでのゲームなど目を酷使する遊びが増え、VDT障害(VDT症候群)を発症しやすいライフスタイルといえます。
実際に、小中学生の約半分がテレビゲームに熱中しているといわれており、目の疲れ・視力低下・心身の不調などを訴える子供も増えています。
視力は一度下がってしまうと元に戻すことが大変難しいです。だからこそ、子供のうちからテレビゲームを含むVDT作業の時間を見直すことが重要です。
テレビゲーム・パソコンなどの長時間の使用を避けたり外で遊ぶ時間を増やしたりして、目を酷使しない生活習慣を子供のうちから身に付けるように意識しましょう。
編集部まとめ

目の症状だけではなく全身症状や心の不調につながる恐れのあるVDT障害(VDT症候群)は、現代人が注意したい症状の1つといえます。
日頃の生活習慣から、VDT障害(VDT症候群)の心当たりがある人も少なくないのではないでしょうか?
なかなか治らない眼精疲労・肩こり・倦怠感がある人は、もしかしたらVDT障害(VDT症候群)かもしれません。
心当たりがある場合は、放置せずに早めに専門医に相談し、大切な目や体の不調を改善していきましょう。
参考文献
情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて(厚生労働省労働基準局長)
職場のあんぜんサイト(厚生労働省)
自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備(厚生労働省)

