個性的な国宝土偶②:研ぎ澄まされた造形美「縄文の女神」
ー 縄文時代中期(約5000年前)山形県舟形町西ノ前遺跡出土
「縄文の女神」, Public domain, via Wikimedia Commons.
高さ45㎝。現存する立像土偶としては最大の大きさで、凛とした堂々した佇まいを感じさせます。女性の姿を究極までデフォルメした造形は、現代の美的感覚にも通じる完成された美しさです。
道路工事の調査で、竪穴住居跡や土器等と共に5つに割れた状態で発見されました。
「縄文の女神」の注目ポイント
エッジの効いた上半身にくびれたウエスト、五角形の文様がある下腹部が印象的です。腰回りにかけては幾何学文様の表現があり、出尻と呼ばれる臀部から続く安定感のある角柱状の足は下へいくほど広がっています。その前後には太い横線が均等に施され、全身の安定感を視覚的にも高めているようです。
一方でカッパ形と言われる頭の後頭部は大きく凹み、顔の表現は一切なく、謎めいた雰囲気を醸し出しています。また素材には石英(水晶を代表とする鉱物)が含まれ、全身は丁寧に磨きあげられ艶やかな地肌を保っています。
一切の妥協を許さない計算されつくされた造形は、土偶造形の到達点を示しているとも言われています。
展示:山形県立博物館
個性的な国宝土偶③:素顔を隠す「仮面の女神」
ー 縄文時代後期(約4000年前)長野県茅野市中ッ原遺跡出土
「仮面の女神」筆者撮影
高さ34㎝、重量感に溢れた土偶は仮面を装着した姿です。標高約950mにある遺跡の集団墓地の穴から、体の右側を上にした状態で発見されました。
「仮面の女神」の注目ポイント
逆三角形の顔面は仮面で、後頭部には仮面を付けているバンドのような表現があります。仮面は大きなV字でその表情を作り上げています。
左右に広げた手の先には渦巻き文様があり、そこから刻まれた線は胸のたすきを掛けたような文様へと繋がり、さらには腹の中心の円へと、一連に繋がるように描かれています。
一方、不釣り合いなほど太い足には文様はなく、よく磨かれたことで強調され、威厳のある雰囲気に拍車をかけているようです。
縄文時代には土で作られた仮面「土面」が作られました。「土面」には小さな穴が開いており、そこに紐を通し顔につけたと考えられています。人は仮面を被る事で、日常の世界から特別な世界へ突入するとも言われています。この土偶には、そうした縄文人の精神文化が映し出されているのかもしれません。
展示:茅野市尖石縄文考古館
