個性的な国宝土偶④:じゃがいも畑から発見された「中空土偶」
ー 約4000年前 縄文時代後期 北海道函館市著保内野(ちょぼないの)遺跡出土
「中空土偶」 出典:北海道デジタルミュージアム
高さ41.5cm。愛称は茅空(カックウ)。 逆三角形のプロポーションの中空土偶は、その名の通り内部が中空(空洞)になっていて、現存する中空土偶の中で最大の大きさを誇ります。
じゃがいも畑で農作業中の女性によって、頭部の一部と両腕が失われた状態で発見されました。
「中空土偶」の注目ポイント
逆三角形のすらりとしたプロポーションで、球形の頭をやや上に向けて直立しています。顔面のパーツは細い粘土紐を貼り付けて表現し、顎には髭のような表現があり、一部には黒漆が見られます。
頭頂部には小さな突起があり、2つの大きな穴が開いています。この頭部とそっくりなものが東京で発見されており、この造形は海を超え本州に伝わったと考えられています。
上半身は三角・楕円・雲形などの文様がバランスよく施され、全身は丁寧に磨かれ鈍い光を放っています。また両足は管のようなもので繋がれていて、体全体の空洞と繋がっています。それらは非常に薄く作られており、最も薄い部分では2mmほどしかありません。粘土の使用量を抑え、乾燥や焼成時の破損を防ぐ工夫が存分に凝らされていると考えられています。
神秘的な造形は当時の最高峰の製作技術によって可能になったと言えるようです。
展示:函館市縄文文化交流センター
個性的な国宝土偶⑤:祈り、それともお産?「合掌土偶」
ー 縄文時代後期(約4000年前)青森県八戸市風張1遺跡出土
「合掌土偶」, Public domain, via Wikimedia Commons.
高さ19.8㎝。祈りを捧げているような姿から「合掌土偶」と呼ばれるようになりました。竪穴住居跡の片隅から、左足を欠き、横たわった状態で発見されました。左足は同じ住居内の2.5m離れた場所から見つかりました。
「合掌土偶」の注目ポイント
このように何らかのしぐさを表わしている土偶は「ポーズ土偶」と総称され、腰を折り曲げたり胡坐をかくようなもの、この土偶のように立膝で座る姿勢のものが、東北地方で複数出土しています。
土偶には4つの部位に割れていた痕があり、その部分は当時接着剤として使われていたアスファルトで修復されていました。祭祀などで故意に壊された後に改めて接合されたとみられ、「蘇り」などを意味しているのではないかと考えられています。
円板状の顔はやや顎を前に出したように付き、頭部は結った髪か被り物を表わしているようです。
胴体は扁平な作りで、胸には小さな乳房、下腹部には正中線が描かれ、股間には女性器が表現されています。当時の出産の姿を表しているとも言われています。
展示:八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館
