矯正治療中に、矯正器具が「外れた」「壊れた」という経験をした人は、意外と少なくありません。矯正器具の脱離・破損は治療期間の延長につながることもあるため、適切な予防と対処が必要です。矯正器具が外れる、壊れるなどのトラブルの原因と治療への影響などを、「日本橋ひびき矯正歯科」の小泉先生に解説していただきました。

監修歯科医師:
小泉 響子(日本橋ひびき矯正歯科)
長崎大学歯学部卒業。東京医科歯科大学での研修後、日本歯科大学附属病院矯正歯科や都内8施設で矯正歯科治療の経験を重ねる。2023年、東京都中央区に「日本橋ひびき矯正歯科」を開院。健康寿命の延伸に寄与する歯科矯正の重要性を説き、機能性と審美性の両面から最適な治療法を提案する。日本矯正歯科学会認定医。日本顎変形症学会、日本舌側矯正歯科学会の各会員。
編集部
矯正治療中に起こりやすい器具や装置のトラブルに、どのようなものがありますか? また、その原因についても教えてください。
小泉先生
ワイヤー矯正の場合、最も多いのは「ブラケットが外れるケース」で、次いで多いのは「ワイヤーがブラケットから抜けて口内に刺さってしまうケース」です。これらの原因として、硬いものや粘着性のある食品を食べたり、装置を自分で触って負荷をかけてしまったりすることが挙げられます。とくに、矯正装置にまだ慣れていない治療初期に起こりやすい傾向があります。
編集部
マウスピース型矯正装置の場合はいかがでしょうか?
小泉先生
マウスピース型矯正装置の場合は、「アライナーに割れやヒビが入るケース」が多くみられます。その主な原因は、誤った方法での装着や取り外しです。具体例を挙げると、片手で無理に着脱したり、口に入れて噛んで装着したりといったケースがみられます。そのほかに、熱湯でのお手入れや不適切な保管方法、外出先での紛失や破損などがあります。とくに、取り外しの際の扱いには十分な注意が必要です。
編集部
矯正器具の脱落や破損を放置した場合、歯並びや治療にどのような影響がありますか?
小泉先生
ワイヤー矯正の場合、ブラケットの脱落やワイヤーの抜けを放置すると、歯が動かなくなるだけでなく、歯並びの後戻りも生じてしまう可能性があります。さらに、ワイヤーは全ての歯とつながっているため、変な曲がり方をしたワイヤーによって歯が意図しない方向に動いてしまうこともあります。マウスピース型矯正装置でも、壊れた状態で使用を続けると装置が正しく適合せず、歯が計画通りに動きません。いずれの場合も、放置することで治療のやり直しが必要になったり、これまでの治療効果が失われたりして、結果的に治療期間が大幅に伸びてしまう可能性があります。
編集部
矯正器具のトラブルに対し、歯科医院ではどのような対応をおこなっていますか?
小泉先生
まず、器具がどのような状況で破損したのかを詳しく確認し、修理や再装着が可能かどうかを判断していきます。修理や再装着が難しい場合は、新しい装置の作り直しが必要です。もう1つ重要なのは、同じ人が破損を繰り返してしまうケースです。このような場合は、生活習慣の見直した装置の正しい使用法についてのアドバイスをおこないます。歯列矯正では治療の過程でどうしても装置が外れやすいタイミングや、壊れやすい状況になることがあります。したがって、事前に患者さんに良く説明し、注意点をお伝えすることも重要だと考えています。
※この記事はメディカルドックにて<矯正歯科治療中に器具が外れた・壊れたときの応急処置と受診のタイミングを歯科医が解説!>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
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