「辞めても配信できない」契約に公取がライバー事務所に注意、芸能界やYouTuberまで波及か

「辞めても配信できない」契約に公取がライバー事務所に注意、芸能界やYouTuberまで波及か

●ライブ配信バブルの裏で起きていた「人材の囲い込み戦争」

──ライバーの移籍が活発化した先には、どんな変化が起きるでしょうか。

これまで、各ライバー事務所は、ライブ配信バブルの裏側で、人材を確保するために不当な契約でライバーを拘束し、流出を防ぐ構造を作ってきました。

しかし、今後は、先ほど述べたとおり、不当な契約に頼るのではなく、「ライバーに選ばれ続けるための価値」を競う時代になります。生き残りをかけたサポート体制の差別化が進むでしょう。

結果として、不当な拘束に依存する事務所や経営能力の乏しい事務所は徐々に淘汰され、ライバーから支持される事務所だけが生き残る構造にシフトしていくとみています。

●業界、YouTube業界にも波及する「大きな一石」

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──ライバー以外の業界への影響はありますか。

今回の公取委の判断は、ライバー業界にとどまらず、マネジメント事務所が存在するエンターテインメント業界全体に波及していくと思います。

これはライバー特有の問題ではなく、むしろ芸能業界が長年抱えてきた構造的な問題です。YouTuber、VTuber、さらには急速に拡大するeスポーツ業界でも、同様のトラブルが頻発しています。

特にVTuber業界では、移籍や退所をめぐって、不当な契約を強要し、それに従わない場合には「キャラクターの使用を妨害する」など、クリエイターの生命線を断つような悪質な事案も増加しています。

私自身、独立や移籍をめぐる契約交渉や裁判を担当していますが、今年9月に内閣官房と公取委が策定した「実演家等と芸能事務所、放送事業者等及びレコード会社との取引の適正化に関する指針」後も、現場でのトラブルは大きく減っていないのが実情です。

それだけに、今回の公取委の注意は、業界の「力関係」を変える大きな一石になると考えています。不当な契約で人材を囲い込む時代は終わり、今後は「選ばれ続ける価値」を提供できるかどうかが、事務所の競争力を左右する時代へと本格的に移行していくでしょう。

【取材協力弁護士】
佐藤 大和(さとう・やまと)弁護士
代表弁護士。芸能人の権利を守る「日本エンターテイナーライツ協会(ERA)」共同代表理事。芸能人、アーティスト、アイドル、クリエイターらの人権、権利問題に注力しつつ、芸能人の「マネジメント契約の法的性質」「パブリシティ権(芸名等)」「競業避止義務」「肖像権」等に関する重要判決も獲得。文化庁「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けた検討会議」委員等の他、テレビ・ラジオのコメンテーター、ドラマ・漫画等の法律監修にも携わる。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:https://rei-law.com/

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