富裕層は「隠すより◯◯せよ」 AI導入で追徴税額「過去最高」、国税庁レポートを読み解く

富裕層は「隠すより◯◯せよ」 AI導入で追徴税額「過去最高」、国税庁レポートを読み解く

国税庁が12月に公表したレポートによると、AIを用いた調査による追徴税額は「過去最高」になったという。国税庁は「富裕層」に対する積極的な調査を実施したようだ。

多くの富裕層を顧問として支える和氣良浩弁護士が、このレポートを読み解いた。納税者は国税庁のAI導入に、何か身構える必要はあるのだろうか。

●「当たり前のことを始めただけ」

──「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によると、調査にAIが活用されました。

「AIを使って追徴税額が過去最高」と聞くと、かなりインパクトがあります。ただ、私の見立ては少しドライです。

国税庁がやっていることを突き詰めれば、「当たり前のことを、当たり前にデータで回し始めた」ということだと思います。

国税庁の公表によると、所得税の調査等(実地調査および簡易な接触)は約73万6000件(前事務年度は60万5000件)で、追徴税額は1431億円(同1398億円)で、いずれも過去最高になりました。

AIを活用した選定を進め、短期間で申告漏れを把握し、高額・悪質と見込まれる事案を優先した──国税庁はそう説明しています。

ここで注目すべきなのは、「AI」という言葉そのものより、調査の運用が最適化された点です。つまり、全件を深掘りするのではなく、データから「当たりが出やすい領域」を抽出し、まず成果が出るところから着実に調査を進めたということです。

人手不足の中で調査能力を高める合理的な流れであり、今後この方向性が逆戻りすることはないでしょう。

●把握しやすい「譲渡所得」に効果を発揮

──具体的にはどこに着目しましたか。

象徴的なのが、不動産や株式などの譲渡所得です。

譲渡が生じれば課税関係が発生し得ることは、構造上きわめて明確です。税務当局から見れば、「見ればわかる」領域でもあります。

AIを使った高度な「魔法」というより、把握しやすい論点から精度高く処理している──実態はそのほうが近いでしょう。

──富裕層に対する調査状況をどうみますか。

富裕層についても、基本的な構図は同じです。

ニュースでは「富裕層への積極調査」が強調されがちですが、実際には「狙われた」というより、資産や取引が多様で、論点が増える分、データ分析の対象になりやすいという側面が大きいといえます。

とくに海外投資、複数口座、複数の収入源を持つ場合、計算や整理、説明が複雑になり、申告漏れやミスが生じやすくなります。

富裕層にとって重要なのは、節税テクニック以前に、資産や取引を一覧化し、根拠資料をきちんと整えておくことです。このレポートからも、その必要性が読みとれます。

また国税庁は、「申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」をランキング形式で公表しました。これは、現金取引の多さ、売上計上のタイミング、経費性の判断、外注や報酬の処理など、論点が多い業態ほど"非違(ルールに抵触する部分)が表に出やすい"ことを示しています。 

上位には「キャバクラ」「眼科医」「ホステス・ホスト」「経営コンサルタント」「太陽光発電」など高額業種が並びました。

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