
お正月の食卓に、伊達巻きや紅白のかまぼこなど、美しい色合いのおせち料理が並ぶと、たちまちお祝い気分が高まります。けれど、おせち料理は見た目や味だけを楽しむものではありません。それぞれの料理には意味や願いが込められているからです。そこで、「現代礼法研究所」主宰の岩下宣子先生に、おせちに込められた思いや、重箱に詰める際の作法を教えていただきました。
健康や長寿につながる縁起のいい言葉を宿した品々
おせち料理には、一年の健康や長寿、豊作といった、家族の幸福を願う気持ちや縁起のいい意味が込められています。代表的な料理とその意味を見ていきましょう。
黒豆:まめに働き、元気に暮らせるようにという無病息災の願いがこもっています。黒は邪気を払い災いを防ぐ魔除けの色とされ、不老長寿をもたらすという意味もあります。
田作り(ごまめ):カタクチイワシの稚魚を干したもので、「五万米」と当て字で書いて豊作を祈願。五穀豊穣の象徴です。
数の子:たくさんの卵があることから「子孫繁栄」を意味します。黒豆、田作り、数の子は、関東の祝い肴3品です。
たたきごぼう:地中にしっかり根を張ることから「家の土台が安定するように」という願いが込もっています。関西では数の子に代わって祝い肴3品の一つになります。
昆布巻:「こぶ=喜ぶ」という語呂合わせ。巻く形には「結びつき」の意味もあります。
海老:「腰が曲がるまで長生きできるように」という長寿の願いがこもります。赤色は魔除けの意味をもちます。
伊達巻き:巻物の形に似ていることから知識や学問の象徴とされ、「知恵が増える」ことにつながります。
栗きんとん:黄金色の財宝を思わせる「金団(きんとん)」は金運を呼ぶ縁起物。
紅白かまぼこ:赤は魔除け、白は清らかさを表し、紅白の組み合わせでお祝いの気持ちを表現。
紅白なます:紅白の水引を思わせる色合いで、「一家の平和と調和」を願います。
「日本は言霊の国であり、古くから言葉には力が宿ると考えられてきました。料理一つひとつに込められた願いや意味を知ることで、その料理に宿るパワーも一緒に取り込むことができるでしょう」と岩下先生は話していました。
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おせちは味だけでなく、いにしえの人々の願いもかみしめる料理です。意味を知っておくと、これまで以上に味わい深く感じられ、重箱を開けた瞬間のわくわく感も増すのではないでしょうか。「今年もみんな元気で楽しく」――そんな思いを込めながら、家族と一緒におせちを囲んでみませんか。

教えてくれたのは…
▶岩下宣子先生
「現代礼法研究所」主宰。NPOマナー教育サポート協会理事・相談役。30歳からマナーの勉強を始め、全日本作法会の故・内田宗輝氏、小笠原流・故小笠原清信氏のもとでマナーや作法を学ぶ。現在はマナーデザイナーとして、企業、学校、公共団体などで指導や研修、講演会を行う。『40歳までに知らないと恥をかく できる大人のマナー260』(中経の文庫)、『相手のことを思いやるちょっとした心くばり』(三笠書房)など著書多数。近著に『77歳の現役講師によるマナーの教科書 本当の幸せを手に入れるたったひとつのヒント』(主婦の友社)。
文=高梨奈々

