介護サービスの利用に際しては、費用の一部を自己負担する仕組みになっています。自己負担割合はすべての方が同じではなく、所得や世帯の状況によって異なります。また、要介護認定の区分やサービスの種類によっても、利用限度額や支給範囲が変わります。本記事では、介護保険制度における自己負担割合の決まり方や、負担を軽減できる制度について解説します。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
介護費用の自己負担割合の判定基準

介護保険の自己負担割合は、年齢や所得、世帯構成などの条件によって異なります。ここでは、判定のタイミングや基準を具体的に確認していきましょう。
介護保険の自己負担割合はいつ・どのように決まりますか?
介護保険の自己負担割合は、原則として毎年8月1日に見直され、適用されます。市区町村は、65歳以上の第1号被保険者の前年(適用開始の前々年1月1日~12月31日)の合計所得金額や世帯の課税状況をもとに負担割合を判定し、その結果を介護保険負担割合証で通知します。この負担割合証は、介護サービス利用時に必ず施設や事業所に提示が必要であり、事業所はこの情報をもとに利用者の自己負担額を算出します。
所得などによって負担割合が変わることはありますか?
はい、所得や世帯の課税状況によって自己負担割合は変わります。自己負担の割合は1割、2割、または3割の3段階で、40歳から64歳までの第2号被保険者は所得にかかわらず一律1割ですが、65歳以上の第1号被保険者は所得水準に応じて2割または3割負担が適用されます。負担割合の判定は、本人の所得だけでなく、同一世帯の65歳以上の被保険者の収入や課税状況も考慮されます。特に2割・3割負担の判定においては、夫婦で介護保険を利用している場合は、合算した世帯全体の所得によって判断されるため注意が必要です。
介護保険の支給限度額と自己負担の目安
介護保険サービスには、利用できる金額の上限が定められています。上限を超えた分は全額自己負担になるため、あらかじめ支給限度額(区分支給限度基準額)を理解しておくことが大切です。本章では、仕組みと費用の目安を解説します。
介護保険の支給限度額(区分支給限度基準額)とは何ですか?
支給限度額とは、介護保険で給付される介護サービス費の上限額を指します。要介護度ごとに厚生労働省が基準を設けており、その範囲内であれば、自己負担は1〜3割で済みます。限度額は月単位で設定され、例えば要介護1なら約16万円、要介護5では約36万円が目安です。限度額の範囲内であれば、訪問介護やデイサービスなど複数の居宅サービスを組み合わせて利用できます。
居宅サービスと施設サービスの支給限度額は異なりますか?
異なります。居宅(在宅)サービスには要介護度ごとに区分支給限度基準額が設定されていますが、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などの施設サービスは、原則として限度額の概念がありません。施設介護では、介護費用のほかに居住費や食費がかかり、これらは自己負担となります。そのため、在宅介護よりも費用が高くなる傾向があります。
限度額を超えた場合、超過分は全額自己負担になりますか?
はい。支給限度額を超えて利用したサービス分については、介護保険の給付対象外となり、超過分は全額自己負担となります。そのため、ケアマネジャー(介護支援専門員)が作成するケアプランでは、限度額内に収まるように調整が行われます。ただし、福祉用具購入費や住宅改修費など、一部のサービスは別枠で支給される仕組みがあり、これらは限度額の計算に含まれません。
要介護度別の月額上限や費用の目安を教えてください
要介護度が上がるほど、支給限度額も高く設定されています。例えば、要支援1は約5万円、要支援2は約10万円、要介護1で約16万円、要介護3では約27万円、要介護5になると約36万円が上限の目安です。自己負担割合が1割の場合、利用者負担はおおむね5,000円〜3万6,000円程度です。実際の利用料は、サービスの種類や回数、地域区分によって多少変動します。

