睡眠障害があると高血圧になりやすい?
十分な睡眠がとれずに睡眠障害になると、血圧が上がりやすくなります。睡眠障害には「不眠症」「むずむず足症候群」「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」などさまざまな種類があります。寝不足をまねくという意味ではどれも血圧上昇につながりますが、とくに影響しやすいのは睡眠中に空気の通り道が狭くなって呼吸がしにくくなる「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」です。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、何かしらの要因があって高血圧になる「二次性高血圧」のもっとも多い要因とされています。
呼吸がうまくできないと、体内の酸素が不足したり、呼吸を強めようとして身体が胸を大きく動かそうとしたりします。その結果、交感神経の強い緊張やホルモン分泌のバランス変化が起こり、血圧が上昇します。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群があると、昼間に加えて夜の血圧も上がりやすいのが特徴です。
ご家族から夜のいびきや呼吸の停止を指摘されたことがある、日中の強い眠気がある方は、かかりつけの内科や呼吸器内科での相談も検討してみましょう。
寝不足が続いたときに注意すべき症状
寝不足が続いたときに注意すべき症状を、5つ紹介します。
朝の血圧の上昇
寝不足が続くと、朝の血圧が上がりやすくなります。
血圧は、夜間に日中より10~20%下がり、朝方から日中にかけて上昇するのが通常の変動リズムです。しかし寝不足の人は、夜間に血圧が十分に下がりきらず、毎日の血圧の変動リズムが乱れがちです。
血圧の変動リズムが乱れていると、血管や臓器のダメージが大きくなり、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まることがわかっています。
疲れの蓄積
寝不足だと、本来睡眠によって回復する疲れが取れずに朝や翌日まで残りがちです。さらに、自律神経のバランスが崩れると「疲れ」以外にさまざまな症状が起こることがあります。
疲れの蓄積によって起こりやすい症状は、以下のとおりです。
・頭痛
・一時的な動悸・めまい
・だるさ
寝不足によってこれらの症状が出ている方は十分な休息をとり、回復しない場合は内科・循環器内科の受診を検討しましょう。
心血管疾患のリスク増加
寝不足は、以下の理由から命に関わる心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを増加させます。
・自律神経のバランスを崩す
・血圧を上げる
・高血圧以外の生活習慣病(糖尿病・脂質異常症)リスクを上げる
・肥満リスクを上げる
・血管の炎症につながる
なお、交代制勤務の職に就いている方は、睡眠のリズムや質が低下しやすく、交代制でない勤務の方よりも心血管系疾患の発症リスクが1.15倍に増加するという報告もあります。
肥満・糖尿病のリスク増加
寝不足はホルモンバランスを乱し、肥満や2型糖尿病の発症リスクも高めます。
睡眠時間が短くなると、食欲を抑制するホルモン「レプチン」の分泌が減少し、食欲を増進するホルモン「グレリン」の分泌は増加します。「寝不足だとドカ食いしやすくなる」というのは、このホルモンバランスの乱れによるものです。この状態は、おもに以下2つの仕組みによって糖尿病のリスクを高めます。
仕組み メカニズム
寝不足によって糖尿病のリスクが直接上がる 寝不足により、体内で分泌されている血糖値を下げるホルモン「インスリン」の効きが悪くなり、血糖値が上昇しやすくなる
寝不足によって起こる「食べすぎ」が原因で糖尿病リスクが上がる
食べすぎによって摂取カロリーが過剰になり、血糖値が上昇する
・食べすぎによる肥満によってインスリンの効きが悪くなる
肥満は、血圧を上げる要因の一つでもあります。寝不足は直接血圧を上げるだけでなく、肥満や糖尿病リスクの上昇にも関わるのです。
精神疾患のリスク増加
寝不足は心の健康にも大きな影響を与え、以下のような精神疾患のリスクを高めるおそれがあります。
・うつ病:気分の落ち込みや不安、食欲不振などが続く状態
・不安障害:強い不安によって日常生活に支障をきたす状態
精神疾患の方は不眠があらわれやすく、寝不足になりがちです。また、現在不眠がある方は、そうでない方よりも将来的にうつ病になりやすいという報告もあります。
慢性的な寝不足はうつ病をはじめとする精神疾患のリスクを高めます。すでに気分の落ち込みや食欲低下などが続いている方は、精神科や心療内科への相談も検討してみてください。

