医療機関への受診する目安となる寝不足・血圧の関連症状とは
寝不足だと全体的な体調が悪くなりやすく、どの程度の体調で受診すべきか迷う方も少なくありません。ここでは、受診の目安となる体調について解説します。
家庭での血圧が高い状態が続いている場合
寝不足による体調悪化を感じていなくても、家庭での血圧が135/85mmHg以上の日が続いたら注意が必要です。
ただし、そのときの体調や血圧の数値によっても異なるため、「こうなったら受診すべき」という明確な基準は定められていません。ただし、以下のような場合は、自覚症状がなくてもできるだけ早く受診することをおすすめします。
・安静にしていても上の血圧が180mmHgを超えている
・定期的に内科にかかっておらず、医師の指導を受けていない
なお、寝不足によって血圧が高いと考えられる日は、血圧の記録に「寝不足(○時間睡眠)」のように記載しておくと、診察時の参考になります。受診先はかかりつけの内科や循環器内科です。
あらわれると危険な症状がある場合
血圧が高くて以下のような症状がある場合は、血圧の急激な変動や脳、心臓などへの影響が出ているおそれがあります。
できるだけ早く、内科や循環器内科を受診しましょう。
症状 可能性のある状態
ひどい頭痛・頭が重い感じ 高血圧の悪化
動悸・脈の飛び 不整脈・心不全
激しい胸の痛み
呼吸の苦しさ
心筋梗塞
片側の手足の麻痺・力が入らない
言葉が出ない
脳梗塞
とくに脳梗塞や心筋梗塞は、どれだけ早く治療を開始できるかが治療の結果を大きく左右します。症状があらわれたら救急車を呼び、できるだけ早く治療を開始しましょう。
「寝不足」で気をつけたい病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「寝不足」が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
睡眠障害・不眠症
睡眠障害とは、睡眠に関するさまざまな病気のことです。睡眠障害のなかで一番多いのは、十分な睡眠の量や質を確保できない「不眠症」です。
以下に、睡眠障害の種類や特徴をまとめました。
種類 概要
不眠症 健康を維持するために必要な睡眠時間の量や質が低下し、生活に支障をきたす状態
過眠症 日常に過剰な眠気が起こる状態
睡眠時随伴症 睡眠中に起きる「寝ぼけ行動」のこと
不眠症は抱える問題によって、「入眠障害(寝つきが悪い)」「中途覚醒(何度も目が覚める)」「早朝覚醒(朝早く目覚めてしまう)」の3種類に分けられます。原因は人によって異なり、ストレスや生活習慣、睡眠環境などのケースもあれば、睡眠時無呼吸症候群、むずむず足症候群などの他の睡眠障害による不眠のケースもあります。
不眠症の治療には、眠りやすくする生活習慣の指導や持病の治療、睡眠薬の処方などがおこなわれます。
「布団に入っても寝付けない」「眠れなくて日中の活動に支障が出る」などの状態が続く場合は、かかりつけの内科もしくは精神科・心療内科などへ相談してみましょう。
高血圧
高血圧とは、心臓が血液を全身に送る際に動脈にかかる圧力が、正常値よりも高い状態です。自覚症状がないケースが多いのですが、放置すると動脈硬化や脳梗塞、脳出血、心筋梗塞などのリスクが高まるため治療が必要です。
医療機関で測る血圧が140/90mmHg以上または家庭で測る血圧が135/85mmHg以上の場合に、「高血圧」と診断されます。
高血圧の治療法は、生活習慣の改善と血圧を下げる薬(降圧薬)の服用です。
減塩、運動、減量、節酒、禁煙、十分な睡眠の確保などをおこない、薬が処方された場合は医師の指示を守り正しく服用します。
家庭で測る血圧が常に135/85mmHg以上であったり、健康診断で血圧の異常を指摘されたりした場合は、内科や循環器内科を受診しましょう。
心筋梗塞
心筋梗塞とは、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が血栓(血の塊)で詰まり、酸素や栄養が行き届かなくなり心筋が壊死する病気です。高血圧や脂質異常症、糖尿病、喫煙、そして極度の寝不足を含むストレスなどが心筋梗塞の発症リスクを高めます。
心筋梗塞になると、締め付けられるような胸の痛みや苦しさ、首や肩などの痛みが突然あらわれます。
心筋梗塞は、発症からどれだけ早く治療を開始できるかがその後の予後に大きく関わります。突然胸の痛みや圧迫感が起こり、安静にしても治まらない場合はすぐに救急車を呼び専門的な治療を受けられる医療機関を受診しましょう。
脳卒中
脳卒中とは、脳の血管に関わる以下3つの病気の総称です。
病名 どのような病気か 治療法
脳梗塞
脳の血管が詰まって血液が行きわたらなくなり、その先の脳細胞のはたらきが悪くなる病気
・血栓を溶かす/取り除く治療(t-PA療法/脳血管内治療など)
・血栓を防ぐ
・脳の炎症を鎮める
・脳のむくみをやわらげる
脳出血
脳の血管が破れる病気
・血圧を下げる
・脳のむくみをやわらげる
・場合によっては手術による出血治療
くも膜下出血
脳の表面にある血管にできたこぶ(脳動脈瘤)が破裂し、「くも膜」という薄い膜の内側に出血する病気
・脳動脈瘤の入り口を閉鎖し、血液が流れ込むのを防ぐ(クリッピング術)
・血管からカテーテルを入れ、動脈瘤内をプラチナ製のコイルで埋める(コイル塞栓術)
どの病気も、どれだけ早く発見して治療を始められるかが生命や後遺症などの予後を大きく左右します。
脳卒中の危険因子は、高血圧や肥満、喫煙、飲酒などです。寝不足が続くと血圧が上がりやすいため、とくに高リスクの方は十分な睡眠をとることも大切です。
突然の頭痛やめまい、片側の手足や顔の麻痺、言葉が出ないなどの症状が出た場合はすぐに救急車を呼び、専門的な治療ができる脳神経外科を受診しましょう。
糖尿病
糖尿病は、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンの働きが足りず、血液中の糖分が多い状態が続く病気です。のどの渇きや体重減少などがあらわれることもありますが、症状が出ないケースも少なくありません。
放置すると過剰な糖分によって血管が傷み、視力や腎機能の低下、手足のしびれ、不眠、場合によっては心臓の異常などがあらわれます。
糖尿病の治療の基本は、生活習慣の改善です。食生活の改善や適度な運動、禁煙などをおこないます。寝不足だと、食欲を制御するホルモンのバランスが崩れて食べ過ぎやすいため、十分な睡眠を心がけることも欠かせません。生活習慣の改善で良くならない場合は、血糖値を下げる薬を使用します。
健康診断で血糖値の異常を指摘された、のどがひどく渇き、体重が減ってきたなどの場合は早めに内科、糖尿病内科を受診しましょう。
うつ病
うつ病とは、脳の神経伝達物質がうまくはたらかず、意欲の低下や強い不安、食欲低下や不眠などが続く病気です。詳細な原因は分かっていない部分もありますが、精神的ストレスや身体的ストレス、環境の変化などが関係して起こる方が多く見られます。
うつ病の治療法は、脳の神経伝達物質のはたらきをととのえる抗うつ薬を飲む「薬物療法」や、対話による治療である「支持的精神療法」などです。不安が強ければ抗不安薬、眠れない場合は睡眠薬などを使うこともあります。
気分の落ちこみや布団に入っても眠れない状況などが続く場合は、精神科や心療内科で相談してみましょう。

