
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、漫画『柊ちゃんと富川ちゃん』(ナンバーナイン刊)を紹介する。ナンバーナインが主催する創作百合フェスタ公式アカウントが11月13日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、5000件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、作者の犬山あむさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
■仲良くカフェに遊びに行ったある日のこと

クーポンを手に入れた富川ちゃんに誘われた柊ちゃんは、彼女と一緒ならと行くことを決めた。不安そうな柊ちゃんから「ずっと隣にいてね」と言われた富川ちゃんは、思わぬ不意打ちにキュンとしながらカフェへ向かうことに。
注文した飲み物を手に席へ向かいひと息つく2人。すると、近くの席では兄弟喧嘩がはじまり、それを仲裁する母親の声が響いてきた。そのやり取りを聞いた柊ちゃんは、過去の記憶を思い出してしまい…。
この和やかさのなかに滲む不穏さを描いた漫画を読んだ人たちからは、「ふわふわからの温度差が」「ああ、不意打ちだこれは」「暖かい未来があるといいな」など、多くのコメントが寄せられている。
■「リアルさを第一にしているため、取材は欠かせません」作者・犬山あむさんに漫画創作へのこだわりをインタビュー

――思わぬ不意打ちに心を打たれてキュンとしている富川ちゃんの表情がかわいらしく、印象に残っています。さまざまな表情を描くにあたって、意識されていることはございますか?
富川ちゃんは顔文字のような表情で喜怒哀楽を描いています。「喜」や「楽」が前に来るよう意識していています!あとは、眉の形で感情を操作することが多いです。垂れ眉は「不意打ち」、つり眉は「驚き」、平行は「悲しみ」を表すことが多いです。柊ちゃんは目で表現を操作することが多いですね。眉毛が見えず口もあまり動かないため、感情はほとんど目にかかっています。あと、照れ屋という設定はありますが根本的に何を考えているのか掴みづらいので、その曖昧さごと表情に反映するよう意識しています。
――富川ちゃんと柊ちゃんはそれぞれ非常に愛らしいキャラクターデザインだと感じます。キャラクターの外見などをデザインする際はどのようにおこなうのでしょうか?
私は黒髪と金髪のペアが好きなので、自然と「黒髪×金髪」のデザインになることが多いです。黒髪はシャイ、金髪は元気というイメージを軸に個性を膨らませています。高校生という設定上、衣装は制服かジャージが中心になるため、印象の差をつける点が少し難しかったです。
――柊ちゃんは、今回のように周囲で過去を思い出す出来事がなければ落ち着いてカフェを満喫できていたのでしょうか?
はい!過去のトリガーに触れなければハッピーエンドで終わっていましたね。ただ、その分どこか別の場面で感情が溢れていたかもしれません(笑)。全体的に、トリガーに触れるシーンがなければ、表面上はハートフルな百合作品としてズンズン進みます。でも、裏を返せば表面的な関係のままにもなりますね。
――本エピソードでは、柔らかなパートと終盤の過去を想起するパートの温度の差に思わず驚いてしまいました。こういったギャップを生み出すにあたり、どのようなことを意識されておられるのでしょうか?
私は「どれだけ残酷に描くか」よりも「どれだけリアルに描けるか」を意識しています。柊ちゃんが母親を思い出す場面は、PTSDの経験がある方にお話を伺い、許可をいただいた上で参考にしました。4コマとは異なりリアルさを第一にしているため、取材は欠かせません。なお、モノクロ描写に切り替わる回は、そのキャラが崩れる大きな出来事の象徴として用いています。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
いつもありがとうございます!これからもずっと頑張りますので、よろしくお願いします!

