算数が苦手な子の多くは「能力」が足りない
塾の授業は、多くの場合問題の解き方の「知識」の指導を行います。
一方、「能力」を鍛えるトレーニングは行っていません。
「能力」を鍛えるためには、最初のサッカーの例で言えば「走り込み」のような基礎トレが必要です。
たった1週間走りまくっても、短距離走も長距離走も速くはなりません。
だからサッカーの練習では、日々の走り込みがつきものですよね。
では、塾のカリキュラムにそういった「能力」を鍛える基礎トレがあるでしょうか?
残念ながら、ほとんどの塾にはありません。
一般的な塾のカリキュラムでは、「第〇回 立体の切断」といった形で、1週間立体の問題の解き方の知識を習って終了です。
もともと空間・立体の感覚がある子はそれであっさり解けるようになりますが、そうでない子はなかなか解けません。
算数・数学が苦手な子たちは、それでもなんとかできるようになろうと、一生懸命いろいろなパターンの問題を解き、その問題ごとに解法を「知識」として覚えようとします。
算数であれば「はじき」とか「くもわ」とか、数学であれば「2aぶんのマイナスbプラスマイナスルートb2乗マイナス4ac」とか、よくわからないまま呪文のように公式を丸暗記して、なんとかあてはめて解こうとします。
ですが、算数・数学の問題は少しいじっただけで、まったく違う印象になります。
出題パターンは無限大。
覚えきれるわけがありませんね。
知識での対処は、早々に限界を迎えるのです。
「能力」を鍛えるためのトレーニング
では、どうすればこの算数に必要な「能力」が鍛えられるのでしょうか?
算数・数学というと、図形問題と文章問題があり、それぞれ「図形的な感覚」「割合的な感覚」などが必要になります。
意外なことにこれらは大元の部分ではつながっているようです。
研究によると「空間認識能力」を育てることで、算数力全般が向上したそうです。
ですから、受験勉強をスタートする前の早い段階から「空間認識力」を育てるトレーニングをしておくことで、算数・数学が得意になる下地を作ることができます。
「空間認識能力」を育てるトレーニングとしてご家庭の中で簡単に取り組めるものとしては、積み木・パズル・ブロック遊び・粘土・折り紙・工作・お絵描きなどいろいろありますね。
また、身体を動かすことも「空間認識能力」を育てることにつながることがわかっています。サッカー・バスケットボール・ダンス・水泳などなど、習い事としてやる方も多いと思いますが、それらは全て算数力向上につながっています。
こうした能力は、年齢1ケタのうちの方が育ちやすいそうです。
幼少期のうちから塾・習い事で知識を増やしても、それだけでは早い段階で頭打ちになります。
知識は後からでも身に付けられますので、まずはしっかり遊び、身体を動かし、算数脳のトレーニングをするようにしてくださいね。
そうすれば、あなたのお子さんは算数・数学で得点を稼いで受験を有利に戦えるようになりますよ。
そして高学年の子たちであっても、算数の能力が育っていないなと感じたら、今から可能な限り空間認識能力を育てる訓練を始めましょう。
確かに若いうちの方が運動をしたときに筋肉はつきやすいですが、中年になってからでも運動をすれば筋肉はつきますよね。
それと同じように、ベストな時期ではなかったとしても、やることで確実に成長は見られます。
大人でも空間認識能力は伸ばせたということが研究でわかっていますので、少し時期を過ぎただけの高学年の子たちであれば、まだまだ伸ばせます。
諦めずに取り組んでくださいね。
菊池洋匡中学受験専門塾 伸学会代表。開成中学・高校・慶應義塾大学法学部法律学科を卒業。算数オリンピック銀メダリスト。著書に『小学生の勉強は習慣が9割 自分から机に向かえる子になる科学的に正しいメソッド』(SBクリエイティブ)『「やる気」を科学的に分析してわかった 小学生の子が勉強にハマる方法』(秦一生氏との共著、実務教育出版)『「記憶」を科学的に分析してわかった 小学生の子の成績に最短で直結する勉強法』(実務教育出版)。伸学会HP:https://www.singakukai.com/→記事一覧へ