今回は、高血圧を放置する危険性や血圧管理の方法などについて、日本抗加齢医学会専門医で林外科・内科クリニック理事長である林裕章氏に聞きました。
Q.40代から血圧が上がりやすくなるのはなぜですか
血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の壁を押す力のことです。年齢を重ねると血管の弾力が落ち、血管が硬く・細くなっていきます。劣化したホースに水を流すと、強い水圧が必要になるのと同じで、血管が硬くなるほど血液を流すのにより高い圧が必要になり、血圧が上がりやすくなります。
血管の老化の主な原因が「動脈硬化」です。40代から血圧が上がりやすくなるのは、この動脈硬化が進みやすくなるためです。
さらに、自律神経の変化、ホルモンバランスの変化や、長年の塩分摂取の蓄積などが重なることで、40代以降は急激に血圧が上がりやすい体質へと変化していきます。
血圧が慢性的に高い状態が続くことを「高血圧」と呼びます。
Q.高血圧を放置することで起こる重大な病気にはどのようなものがありますか
高血圧には自覚症状がほとんどありません。しかし、放置すると常に高い圧力が血管にかかり続け、血管の内側を傷つけます。これを修復しようとして血管が厚く硬くなり、動脈硬化がさらに進行します。動脈硬化が進むと、血管は詰まったり破れたりしやすくなります。重要な臓器への血流障害が起こりやすくなり、特に脳・心臓・腎臓の3つの臓器へ深刻なダメージを与えます。
・脳:
動脈硬化で血管が破れれば「脳出血」、詰まれば「脳梗塞」になります。
・心臓:
冠動脈が狭くなると「心筋梗塞」や「狭心症」に。高い血圧が続くことで心臓に負担がかかり、「心肥大」や「心不全」の原因にもなります。
・腎臓:
細い血管が多いため傷みやすく、腎機能が低下します。進行すると透析が必要になる場合があります。
高血圧は静かに血管と臓器をむしばみます。これが、高血圧が「サイレントキラー」と呼ばれるゆえんです。

