●"みんなのモヤモヤ"を言語化し、社会に投げかける
公共訴訟に特化して活動する中で、今までの弁護士業務とは異なる仕事も多く経験しているという。
「既存のルールに正面から挑戦する裁判が多いため、法律の制定過程に遡ったり、海外のスタンダードに当たることも多いです。国内外の実務家や研究者と協働する中で新しい視点が生まれるといったダイナミックな展開は、とても刺激的です。
訴訟対応だけでなく、報道をしてもらうためにメディアとの関係づくりをしたり、支援団体とどんなキャンペーンをするか考える、国会にアプローチするなど、いわゆる"弁護士らしくない仕事"にも多くの時間を使っています」
それでも戸田さんが一番大切にしているのは、原告の声だという。
「たとえば『立候補年齢引き下げ訴訟』は、憲法上、明文のない被選挙権の具体的保障が争点となっていますが、これを正面から論じた文献はほとんど存在しません。
裁判を通して法理論が深まり、原告一人ひとりの言葉が研ぎ澄まされていく中で、これまで輪郭の見えなかった概念に少しずつ命が吹き込まれていく。そんな感覚があります。
なぜ18歳から立候補できるべきなのか。議論を重ねて紡ぎ出された原告6人の意見陳述を法廷で聞いたとき、可視化されていなかった権利が、今、目の前で形になろうとしている。その手応えをはっきりと感じました」
公益活動であると同時に、個人のための司法手続きでもある公共訴訟のやりがいについて、戸田さんはこう続ける。
「公共訴訟に関わっていてうれしいのは、人々を新たな行動へとつないでいくことです。ある訴訟を支援し、毎回傍聴に来ていた高校生が、別の訴訟で原告として名乗りを上げてくれたこともありました。
最初は小さな訴えであっても、裁判を起点とするプロセスを通じて社会に広がり、少しずつ変化をもたらしていく。その過程にやりがいを感じています。
目の前の依頼者に向き合いながら取り組んでいることが、その人だけでなく多くの人のためにもなる。それをダイレクトに実感できるのが、公共訴訟のおもしろさです。
僕らが扱う訴訟は、そもそも『それが権利として認められるのか』すら定まっていないテーマも少なくありません。
原告と弁護団が一緒に時間をかけ、まだ言語化されていない"モヤモヤ"した、けれど大切な何かを、どう言葉にしていくか。そのプロセスを、社会が少しずつ受け止めてくれる。それが公共訴訟の意義であり、最も大切な点だと思います」
【プロフィール】とだ・よしたか/1985年千葉県生まれ。国際基督教大学教養学部、慶應義塾大学法科大学院卒業。2020年弁護士登録。早稲田リーガルコモンズ法律事務所を経て、2023年11月に設立された法律事務所LEDGEで、日本初のフルタイム公共訴訟弁護士になる。

