
初日の出は、お正月行事のなかでも格別、厳かな気分になるものです。新しい年の夜明け、冷えた空気の中を太陽がゆっくりと昇ってきた瞬間、胸の奥からすがすがしい気持ちがわき上がってきます。自然と手を合わせたくなる初日の出ですが、じつは「どう拝むか」にもちゃんとした決まりがあるのだそう。「現代礼法研究所」を主宰する岩下宣子先生に、正しい拝み方を教えていただきました。
神様の力は無限に広がるからどこで拝んでもOK
日本神話で太陽の神とされる天照大神(あまてらすおおみかみ)は、あらゆる命に光をもたらす存在です。そんな最高位の神様を拝むタイミングとしては、いつがベストなのでしょう。
「初日の出を拝み始めるタイミングに厳密な決まりはありませんが、『最初の光が差し始めた瞬間に礼を始め、太陽の全体が見えるまで手を合わせる』と、天照大神の光の力を心身にしっかりと取り込めるといわれています」と岩崎先生。
太陽の力は地上にあまねく広がるので、拝む場所は自宅のベランダや庭先で十分です。
もちろん、海辺や山などの自然の中や、神社などの神聖な場所で日の出を迎えると、より敬虔な気持ちになれるので、訪れてみるのもいいでしょう。
たとえ元旦の天気が曇りや雨でも、太陽が昇っていることに変わりはありません。
あらかじめ日の出の時刻を調べ、その時間に手を合わせてみてください。
そもそも、初日の出を拝む風習はいつ頃、どこから始まったのでしょうか。
元日の早朝、宮中では「四方拝(しほうはい)」と呼ばれる重要な儀式が行われます。
天皇が東西南北、天地四方の神々などを拝し、国家の安泰と五穀豊穣を祈るもので、この伝統が庶民にも広まり、明治以降、初日の出を拝む習慣が根づいたのです。
岩下先生によれば、初日の出を拝むときも神社参拝と同じように「2礼2拍手1礼」をするのが基本だそう。
「息を吸いながら深くお辞儀をし、止まったところで息を吐き、再び吸いながら体を元に戻す――この動作を『礼三息(れいみいき)』といい、相手への敬意を表すとともに、自分の心を落ち着ける作用もあります」
拝むときは、自分の願いごとだけを唱えるのではなく、「無事に新しい年を迎えられたことへの感謝」や「年神様へのお礼の言葉」も添えるようにしてくださいね。
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朝日を浴びると体内時計が整い、気持ちも前向きになることが科学的にもわかっています。それが一年の始まりの日の出であり、正式な作法でお祈りするなら、得られる効果もひときわ強そう! 晴れやかに昇る太陽の光を浴びて、新しい年のエネルギーを心と体いっぱいにチャージしましょう。

教えてくれたのは…
▶岩下宣子先生
「現代礼法研究所」主宰。NPOマナー教育サポート協会理事・相談役。30歳からマナーの勉強を始め、全日本作法会の故・内田宗輝氏、小笠原流・故小笠原清信氏のもとでマナーや作法を学ぶ。現在はマナーデザイナーとして、企業、学校、公共団体などで指導や研修、講演会を行う。『40歳までに知らないと恥をかく できる大人のマナー260』(中経の文庫)、『相手のことを思いやるちょっとした心くばり』(三笠書房)など著書多数。近著に『77歳の現役講師によるマナーの教科書 本当の幸せを手に入れるたったひとつのヒント』(主婦の友社)。
文=高梨奈々

