「ピロリ菌を除菌したから安心」これってホント?  医師が警鐘を鳴らす“見逃されやすいリスク”とは

「ピロリ菌を除菌したから安心」これってホント? 医師が警鐘を鳴らす“見逃されやすいリスク”とは

ピロリ菌感染は胃炎や潰瘍だけでなく、胃がんの最大の危険因子として長らく注目されてきました。近年では、除菌することによって胃がんリスクを大きく減らせることが明らかになっています。しかし、除菌を終えたからといって病気にならないとは言い切れないようです。そこで今回は、ピロリ菌の除菌後にも定期的な内視鏡検査が必要とされる理由や適切な受診間隔について、所沢みやた内科クリニック院長の宮田大士先生に詳しく解説していただきました。

≫【1分動画でわかる】「ピロリ菌を除菌したから安心」これってホント? 宮田 大士

監修医師:
宮田 大士(所沢みやた内科クリニック)

浜松医科大学医学部医学科卒業。国家公務員共済組合連合会名城病院にて初期研修・外科医員。名古屋大学医学部第一外科学教室入局。2006年桐生厚生総合病院外科医長、2008年越谷誠和病院外科に勤務。2024年より所沢第一病院総合診療科に所属し、同年10月に所沢みやた内科クリニックを開院。日本外科学会専門医、日本ヘリコバクター学会H.pylori(ピロリ菌)感染症認定医、日本乳がん検診精度管理中央機構マンモグラフィ読影認定医(A判定)、日本糖尿病協会登録医。厚生労働省認定 がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。

ピロリ菌と胃がんの関係について知る

ピロリ菌と胃がんの関係について知る

編集部

はじめに、ピロリ菌感染が胃に与える影響について教えてください。

宮田先生

ピロリ菌は胃粘膜に慢性炎症を起こし、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因になります。感染が長期化すると粘膜が薄くなる萎縮性胃炎へ進み、さらに「腸上皮化生」というがんの前段階の状態になることもあります。これらの段階的変化は胃がんの土台となるため、単なる胃の不調ではなく、がんのリスクとして認識することが重要です。細かい話ですが、「ヘリコバクター属」の「ピロリ菌」だけでなく、最近はヘリコバクター属のほかの菌も悪さをしていたり、実はピロリ菌にも5、6種類あるという報告があったりもします。ただし、診療の対応は変わりません。

編集部

ピロリ菌は、どのような仕組みで胃がんリスクを高めるのでしょうか?

宮田先生

ピロリ菌は尿素を分解してアンモニアを産生し、粘膜の機能を損ねます。慢性炎症が持続するとDNA損傷や修復異常が蓄積し、がん化する確率が上昇します。また、胃内環境の変化により、本来は出現しにくい腸型上皮が胃粘膜に置き換わる腸上皮化生が進行し、発がんリスクが上昇します。すなわち、炎症の長期化と粘膜構造の変化が二重に作用して、胃がんの発生リスクを高めるのです。

編集部

除菌をおこなうことで胃がんリスクはどの程度低下するのでしょうか? 完全に防ぐことは可能なのか教えてください。

宮田先生

除菌により炎症は軽快し、将来の胃がんリスクは有意に低下します。若年時に除菌するほど予防効果は高いとされますが、いったん進んだ萎縮や腸上皮化生は完全には回復しない場合があります。このため、除菌はリスクを大幅に下げる手段であっても、ゼロにする手段ではありません。とくに萎縮が強い方や家族歴のある方は、除菌後も定期的な内視鏡検査を継続し、早期発見・早期治療の機会を失わないことが重要です。

ピロリ菌除菌後も内視鏡検査が必要な理由とは

ピロリ菌除菌後も内視鏡検査が必要な理由とは

編集部

ピロリ菌を除菌しても胃がんが発生する可能性があるのはなぜでしょうか?

宮田先生

除菌をすると炎症は落ち着きますが、除菌までに蓄積した粘膜ダメージやすでに形成された萎縮・腸上皮化生が残存することがあります。胃がんは年単位で進むため、過去のリスクが将来に影響する点が本質です。実臨床でも除菌後の胃がんは一定数認められます。したがって、除菌=検査不要ではなく、粘膜の質を見守る目的での定期的な内視鏡検査が欠かせません。とくに高齢者や強い萎縮例、家族歴のある方は継続フォローが推奨されます。

編集部

ピロリ菌を除菌した後に、再び感染する可能性はあるのでしょうか?

宮田先生

日本では成人の新規再感染はまれで、年間発生率はきわめて低いと報告されています。多くは小児期に感染し、その後は衛生環境の改善もあって新規感染は少数に留まります。ただし、衛生状況の悪い地域への渡航や感染者との密接な接触などで、再感染がゼロとは言い切れません。胃の不調が再燃したなど、ピロリ菌が関連する疾患が疑われる状況では、医師の判断で再検査・再除菌を検討します。

編集部

除菌後に内視鏡検査を受ける必要性について教えてください。

宮田先生

内視鏡は粘膜の微細変化を直接観察でき、前がん病変の評価や早期胃がんの拾い上げに最も有効です。早期に発見できれば、内視鏡による治療で完治を目指すことができ、体への負担も少なく済みます。さらに、胃炎や潰瘍、ポリープなど合併疾患の早期対応にもつながります。経口・経鼻のいずれでも診断能はほとんど同じですが、苦痛の少ない経鼻法は継続受診のしやすさという利点があり、結果として見逃し低減に寄与する可能性があります。

配信元: Medical DOC

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