
「誰も悪くない、でもどうして私だけ」
障害のある妹・桃乃の介助をしている姉の透子。彼女は妹の世話のために、自分を抑えて我慢しながら生きてきました。だけどそれが当たり前ではないと知ったとき、彼女は家を出て妹から離れたいと願うようになります――。
コミックエッセイ『妹なんか生まれてこなければよかったのに きょうだい児が自分を取り戻す物語』は、障害のある兄弟姉妹を持つ“きょうだい児”の繊細な心を丁寧に描き出します。
今回は、著者のうみこさんに、主人公の透子の人物像について、そして、現実の“きょうだい児”を取り巻く問題について伺いました。
『妹なんか生まれてこなければよかったのに』のエピソードより



高校生になった透子は、妹・桃乃に障害があることを友達に打ち明けられずにいました。
そんなある日、妹とバスに乗ったとき、偶然仲の良い友人たちと遭遇。バスの中で赤ちゃんの泣き声に反応した桃乃がパニックを起こし、その様子を見られてしまいます。

「どう思われるだろう……」と、不安に押しつぶされそうになる透子。けれど、翌日も友達の態度は変わりません。胸をなでおろすと同時に「もしかして私のこと可哀想って思ってる?」と複雑な気持ちに。


そして迎えた友人たちとのお泊まり会。友達の小2の妹が一人で身支度を整え、てきぱき動く姿を見て、衝撃を受けます。「“普通の妹”って、こんなに手がかからないんだ」自分が妹の介助をしている間、友達は自由な時間を過ごしている――そのことをたまらなく羨ましく感じてしまう透子。その頃の透子は、ただただ桃乃と離れたくて仕方なかったのです。

『妹なんか生まれてこなければよかったのに』著者・うみこさんインタビュー

――主人公の透子は、妹の桃乃のために自分を抑え「私がママを助けなきゃ」といい子でいようとしますね。この透子というキャラクターはどのようにして生まれたのでしょうか?
うみこさん:取材を通して、きょうだい児の方は優しい方が多くて、いい子でいなきゃ!みたいな気持ちが人一倍強い印象を受けました。なので、きょうだい児の方のブログやXでの投稿などを参考に、主人公は何でもそつなく出来る優等生を描きたいと思いました。いい子で自分の本音を隠して生きてきた主人公が、自分を取り戻す再生の話にしたかったです。
お母さんからしたら娘ふたりともかわいい大切な存在だと思うのですが、どうしても障害のある桃乃にかかりっきりになってしまって、何でも出来る姉の透子はほっとかれがちになる。それが幼少期であれば、「私は愛されてないのかな?」って不安に感じてしまうと思いますし、お母さんに愛されたくていい子を演じてしまうんですよね。そういうエピソードはきょうだい児の方に多く共感いただけるんじゃないかと思いました。
それと、きょうだい児の方の問題で挙げられることとして結婚や出産など、ライフステージでぶつかる問題についてもしっかり触れたかったです。

