2025年の特殊詐欺の被害額が1213億円にのぼった。警察庁が12月に発表した。11月末時点の数字であり、年間被害額はさらに増える見込みだ。
12月には「首都圏闇バイト強盗事件」の指示役とみられる4人が逮捕された。このうち1人は、別の特殊詐欺事件でも回収役に指示したとして逮捕されている。
特殊詐欺被害は深刻さを増しており、組織的な犯行の広がりも指摘される。全国の警察は、匿名・流動型犯罪グループへの対策を最重要課題と位置づけ、取り締まりを強化している。
かつて特殊詐欺は「母さん助けて詐欺」と呼ばれることもあった。しかし、その手口はその後、多様化の一途をたどっている。警視庁は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、現在ではこの呼び名を使っていないと明かした。
被害者の多くは「自分は大丈夫」と過信してしまい、結果としてだまされて、多額の財産を奪われている。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)
●すでに昨年の被害額は上回っている
警察庁の発表によると、特殊詐欺の被害額は今年7月時点で、すでに2024年の年間被害額を上回った。
警察庁は「詐欺の手口は常に進化し続けています」と注意を呼びかけている。
電話口の相手が警察官を名乗り、「犯罪の容疑がかかっている」などと不安をあおって金銭を要求するケースも後を絶たない。中には、裸になることを求めるなど、悪質な性的被害を伴う手口も横行している。
こうした「ニセ警察詐欺」のほか、SNSのアカウントをフォローすることで「投資グループ」に誘導され、金銭をだましとられるような「SNS型投資詐欺」の被害額は1071億円に達した。
また、恋愛感情につけ込んで金銭をまきあげる「ロマンス詐欺」の被害額も479億円にのぼる(いずれも今年11月時点)。
こうした詐欺は、被害者を経済的に破綻させるだけでなく、人間関係を崩壊させ、ときに自死へ追い込むことすらある。その深刻さから「間接殺人」と表現されることもある。
●12年前に作られた「母さん助けて詐欺」ポスター
特殊詐欺が、かつて「母さん助けて詐欺」と呼ばれていた時代もあった。
この名称は、警視庁が公募し、2013年5月に発表したものだ。現在では、ほとんど見聞きすることはないが、終了したという公式なアナウンスもおこなわれていなかった。
そこで、弁護士ドットコムニュースが警視庁に取材したところ、「現在では使用していない」との回答があり、事実上、1年程度で終了していたことがわかった。
「2013年に、当時の犯罪抑止対策本部(今年10月発足の『匿名・流動型犯罪グループ対策本部』)が公募して、『母さん助けて詐欺』の名称を使用することとなりましたが、同時期に、警察庁が示した『特殊詐欺』で統一されたことで、現在では「特殊詐欺」を使用することになりました」(警視庁)
実は、その名残が今年まで都内に存在していた。
JR新宿駅構内にある「鉄道警察隊新宿分駐所」には、「母さん助けて詐欺」への注意を呼びかけるポスターが貼り出されていた。
警視庁によると、ポスターが制作されたのは2013年5月以降とみられるという。2025年11月10日時点では確認できたが、警視庁への取材から数日後、ポスターは撤去された。

この名称の消滅は、「子から親への電話」という古いイメージだけでは、現在の犯罪を防ぎきれなくなったという時代の変化を映し出している。
繰り返しになるが、手口は極めて多様化している。ターゲットは母親だけではない。父親も、若者も、仕事の同僚も、そして恋愛や結婚への思いを抱く人も、誰もが標的になり得る。
警察の公式サイトでは、こうした多様な手口が紹介されている。
年末年始は家族が集まる機会も増える時期だ。犯罪者がさまざまな角度から狙ってくる。「誰もが被害者になり得る」という認識を、いま一度、家族や身近な人と共有しておきたい。

