●旅館業法は何を定めているのか
旅館業法は、特定感染症の患者である場合や、賭博など違法行為、風紀を乱すおそれがある場合、カスハラに当たる要求を繰り返す場合、宿泊施設に余裕がない場合など「正当な理由」がない限り、宿泊を拒んではならないと定めている。
女性は事前に予約しており、「通名の記載を差別にあたる」とうったえた行為は、宿泊料の不当な割引や過剰なサービス求めるようなカスハラには該当しない。それにもかかわらず、宿泊を拒否されたかたちだ。
●別のホテルでは提示不要で宿泊できた
女性は泣きながらホテルを飛び出したが、他に泊まるあてはなかった。ネットカフェで夜を明かすことも覚悟したものの、すぐ近くのホテルに宿泊することができたという。
「泣いていたのは悲しいからではなく、悔しかったからです。別のホテルで事情を話すと、フロントの方が支配人を呼んでくれて『そういう事情でしたら』と、パスポートの提示も求められず、空いていた部屋に案内してくれました」
この時点で、女性はビジネスホテルを訴える決意を固めたという。
国内に住所を持つ者に対して、一律にパスポート提示を求める法的根拠はないにもかかわらず、住所が記載された健康保険証で本人確認せずに宿泊拒否したことは旅館業法違反にあたるのではないか──。
また、「通名なら泊める」という提案は、民族的背景に基づく不利益な取扱いであり、「今までもそうしてきた」という発言は、これまでにも同様の宿泊拒否が繰り返されてきた可能性を示唆するのではないか──。
そう考え、裁判の準備を進めた。

