パスポート提示を断ると宿泊拒否、在日コリアン女性がホテル提訴「悪意がなくても差別」

パスポート提示を断ると宿泊拒否、在日コリアン女性がホテル提訴「悪意がなくても差別」

●訴訟提起後の苦悩「本名で生きられないのか」

神戸地裁に訴状を提出し、記者会見を開いた今年5月以降、女性は深く落ち込んだという。

「これが果たして事件なのか?パスポートを見せれば解決するのに」「規則なんだから従えばいい」といった記者の反応や、ネットニュースのコメント欄に寄せられた「犯罪者だから身分を証明するものを見せられないのでは」といった根拠のない誹謗中傷コメントを目にしたからだ。

「正しいことをうったえても曲解される。そんな社会では、本名で生きていくことは困難なのではないかと悩みました。でも、裁判を取り下げるという選択肢はありませんでした。私が我慢すれば丸く収まるのかもしれない。でも、それはおかしい。『みんなのために個人が犠牲になれ』というのはおかしい。もし犠牲が必要なら、力を持つ側が負うべきです」

その後、全国紙記者から「ネットの向こうにいる人ではなく、裁判に来てくれるリアルに生きている人に目を向けてほしい」と助言を受けて、気持ちを立て直すことができたという。

●ホテル側「悪意はない、行政指導に基づく」

裁判を続ける中で、支援を表明する人も増え、女性は「一人で戦っているのではない」と実感できるようになった。12月4日の期日には、傍聴席に収まりきらないほどの人が集まった。

「宿泊拒否をされたときは一人で泣いて、ネットでは犯罪者扱いまでされました。一人で戦っていると絶望していたけれど、たくさんの人が駆けつけてくれた。良い意味で『なんて日だ!』と思いました」

一方、ホテル側は、パスポートなどの提示を繰り返し求めたことは否定したうえで「行政から、外国人宿泊者については旅券等の写しを取るよう指導があった」「女性が日本に住所があるのかがわからなかったため、確認の必要があった」「一連の行為は悪意によるものではなく、提案にすぎないため不法行為にはあたらない」と主張している。

●「悪意がなくても差別」女性の思い

これに対して、女性は語る。

「悪意があるかどうかは関係ありません。差別は差別です。この裁判を通じて判例を残し、これ以上、同じように悔しい思いをする人をなくしたいと思っています」

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