認知症の家族と暮らす中で、思いがけない行動に日々戸惑うことがあります。私が特に困り果てたのは、「家から電話を次々とかけてしまう」という行動でした。知人だけでなく、見覚えのない番号にもかけてしまい、そのたびに相手へ説明とお詫びをし続けたあのころの慌ただしさは、今でも忘れられません。
止められない電話の連発
認知症の家族は、家の固定電話を使っていろいろな人に電話をかけてしまうようになりました。家族としては電話を隠したくても、家電なのでそうもいかず、かといって電話線を抜けばこちらも使えなくなってしまいます。
知人やまったく知らない相手から「お電話がありまして……」と連絡が来ることも増え、そのたびに事情を説明して頭を下げる日々が続きました。なぜ電話をかけるのか、その理由はわからず、本人に問いただしても混乱させてしまうだけ。どうしたらいいのかわからないまま時間だけが過ぎていきました。
家族が選んだ苦肉の策
悩んだ末、私たち家族が選んだ対策は、通信がつながっていない中古の電話を用意し、認知症の家族の前に置いておくことでした。
本来の固定電話は、ほかの家族にしかわからない場所に移動。ダミーの電話は「壊れていて通じない」という体でそのまま置いています。
いつまで気づかれずに済むのか不安はありますが、それでも電話代が跳ね上がる心配がなくなり、一時的とはいえ生活が落ち着いたのはたしかでした。

