
お正月、親戚の集まりや実家への帰省の際に、たくさんの子どもたちに渡すことになるお年玉。「いくら包むのがちょうどいいの?」と、毎年のように頭を悩ませる人も多いのではないでしょうか。少なすぎると気が引けるし、逆に多すぎると浮いてしまいそう――。そんなみなさんの迷いに、「現代礼法研究所」主宰・岩下宣子先生に答えてもらいました。
1ヶ月分のおこづかいが目安。幼稚園児なら切りよく1000円
岩下先生によると、お年玉の額は「その年代の1ヶ月分のおこづかい程度」が妥当とのこと。親戚どうしで金額に差が出ると気まずくなりがちなので、あらかじめ話し合って基準を決めておくと安心です。
【年代別・お年玉の目安額】
* 幼稚園児 ……1,000円
* 小学校低学年……2,000円
* 小学校高学年……3,000円
* 中学生 ……5,000円
* 高校生 ……5,000〜10,000円
ところで、みなさんは「お年玉」という言葉の由来を知っているでしょうか?
語源は「年魂(としだま)」と呼ばれるもので、年神様にお供えしたお餅に宿る力のことを指します。
昔は家長がそのお餅を最初に食べ、その後家族に分け与えていましたが、この「分け与えたお餅」を「お年玉」と呼んでいたのです。
江戸時代になると、商家などで年少の奉公人にお餅の代わりにお金を渡す習慣が広まり、次第に子どもたちに金銭を渡すスタイルが一般化していきました。
お年玉は包み方にもひと工夫を
晴れやかな正月行事ですから、お年玉を入れるポチ袋にも少しこだわってみましょう。岩下先生は、「和紙を使ったポチ袋をおすすめします」とのこと。
和紙の手ざわりや、お正月アイテムを散りばめた絵柄、といった日本の伝統文化に触れることで、子どもたちの感性が育くまれ、物を大切にする気持ちも芽生えるからだそうです。
年に一度の特別な贈り物は、袋のデザインも送る側の心を伝える手段のひとつになるんですね。
自分の子どもが思いがけず高額なお年玉をいただいた場合も、美しいポチ袋は活躍します。
「つい『同じくらいの額を返さなくては』と焦ってしまうものですが、お付き合いが続かなくなるので、無理に金額を合わせる必要はありません」と岩下先生。
気のおけない親戚や友人であれば、親子でしっかりお礼を言い、きれいなポチ袋に入れたお年玉を心を込めて渡せば十分です。
子どものいない方からお年玉をいただいた場合も、その場できちんと感謝を述べれば誠意は伝わります。
大事なのは金額よりも気持ちです。
※ ※ ※
お年玉というと、どうしても「金額の多い少ない」に意識が向きがちですが、お年玉の本来の意味は「神様から授かった年魂を分け与える」こと。より多くの額を分配できるというのは、力と財力のある証ですので、ありがたくいただき、感謝の気持ちで新しい年を始めるのがいいのではないでしょうか。

教えてくれたのは…
▶岩下宣子先生
「現代礼法研究所」主宰。NPOマナー教育サポート協会理事・相談役。30歳からマナーの勉強を始め、全日本作法会の故・内田宗輝氏、小笠原流・故小笠原清信氏のもとでマナーや作法を学ぶ。現在はマナーデザイナーとして、企業、学校、公共団体などで指導や研修、講演会を行う。『40歳までに知らないと恥をかく できる大人のマナー260』(中経の文庫)、『相手のことを思いやるちょっとした心くばり』(三笠書房)など著書多数。近著に『77歳の現役講師によるマナーの教科書 本当の幸せを手に入れるたったひとつのヒント』(主婦の友社)。
文=高梨奈々 イラスト=きたがわなつみ

