2位:続・続・最後から二番目の恋
『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)は、鎌倉を舞台にテレビ局プロデューサー・吉野千明(小泉今日子)と、鎌倉市役所で働く長倉和平(中井貴一)、そして長倉家の面々を中心に描く“大人の群像劇”です。シリーズが続いても魅力が薄れないのは、人生のままならなさを誤魔化さずに描いているから。不器用でカッコ悪い自分、社会に必要とされていない気がする不安——年齢を重ねても、なくなることはありません。
“さみしい大人”たちへの応援歌
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そんな現実を描きながらもこの作品が温かいのは、すべてが好転するわけではない日常の中で、登場人物たちが「自分らしく生きる」ことを諦めないから。観る者の生き方まで肯定してくれるような岡田惠和の台詞もやたら沁みます。
第1期から一貫して千明のナレーションに登場する「さみしくない大人なんていない」というフレーズは、第3期目となった本作でも響き続け、“さみしい大人”たちへの応援歌であり、処方箋でもありました。
歳を重ねることが不安になったら、きっとまたこの作品のお世話になる。千明と和平、長倉家のみんなに、何度でも会いたいです。
1位:舟を編む ~私、辞書つくります~
『舟を編む ~私、辞書つくります~』(NHK総合ほか)は、辞書編纂という一見地味な仕事に、命を燃やす人たちの情熱を余すところなく映した“お仕事ドラマ”の傑作でした。ファッション誌編集部から辞書編集部へ異動してきた岸辺みどり(池田エライザ)は、言葉を雑に扱いがちだった主人公。超生真面目な上司・馬締(野田洋次郎)や仲間との交流を通じ、用例採集カードを積み上げ、語釈の一語一句に悩み抜く現場の熱量に触れていきます。
辞書という営みの懐の深さに号泣
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「正しく言葉を使う」ことの美しさと難しさが、主人公の成長とともに伝わってくるのが心地よい。十数年をかけて辞書『大渡海』を完成させようとする彼らの姿は、根気と誠実さの連続で、「どんな仕事でも、真剣に向き合えばこんなに尊い」とまっすぐ胸に刺さりました。
物語はコロナ禍も描き、暮らしが一変した中で「いま残すべき言葉」を巡って編集部が揺れる展開も含め、私たちの記憶や痛みまで受け止めて未来へ手渡す、辞書という営みの懐の深さに泣かされました。お仕事ドラマとしても、ヒューマンドラマとしても超秀逸!観終わったあと、言葉も仕事も、少しだけ丁寧に、大切にしたくなる作品でした。
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あえて今回はベスト10に入れなかった大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』も、朝ドラ『あんぱん』も素晴らしかった。それ以外にも、ここでは紹介しきれないほど数々の名作ドラマが生まれた2025年。
配信のオリジナルドラマも力作がどんどん制作され、ドラマ好きとしては嬉しい悲鳴をあげた一年でした。皆さんの2025年ベストドラマは、なんですか?
<文/鈴木まこと>
【鈴木まこと】
日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間でドラマ・映画を各100本以上鑑賞するアラフォーエンタメライター。雑誌・広告制作会社を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとしても活動。X:@makoto12130201

