あと数日で2025年が終わる。夫婦関係に悩む人の中には「年内に離婚届を提出して、身の周りを整えて新年を迎えたい」と考えるケースも少なくないだろう。
しかし、経済的な観点からみると、年末ぎりぎりの離婚には思わぬデメリットが潜んでいる。
「過去を清算し、新しい生活のスタートを区切りよく始めたい気持ちはわかりますが、少し立ち止まって考えてみませんか。たった数日の違いで、税金や法的に得られる金額が変わる可能性があるのです」
こう話すのは、離婚や男女トラブルにくわしい福本有希弁護士だ。年内の12月31日までに離婚した場合、損になることがあるという。
●焦って手続きを進めると、かえって時間がかかることも
──「年内に離婚したい」という相談はよくあるのでしょうか。
はい。毎年12月ごろになると、「年内に決着をつけて、新しい年を一人で、あるいは子どもと迎えたい」という相談が寄せられます。
年末年始は帰省や家族・親戚の集まりが増える時期で、「夫婦という形を維持したまま過ごすのが辛い」という思いが強くなるのだと思います。
ただし、離婚には当事者同士の協議→調停→裁判と段階があるため、焦って進めることで条件交渉の詰めが甘くなったり、むしろ手続きが煩雑化して時間がかかる場合もあります。
さらに、年末離婚には経済的なデメリットが生じる可能性がある点にも注意が必要です。
●必ず知っておきたい税制上のポイント「配偶者控除」
──年末に離婚すると、どんなデメリットが生じますか。
「配偶者控除」の適用可否が考えられます。
配偶者控除は、所得税や住民税の計算において、その年の12月31日時点で民法上の婚姻関係にある場合に適用されます。
つまり、年間のほとんどを夫婦として過ごしていたとしても、12月31日までに離婚届が受理されれば、その年は「配偶者なし」と扱われて、控除が使えない可能性があります(※ただし、所得制限などの要件によります)。
この影響は、夫婦の「税金を支払う側」(主に高所得者側)だけの問題ではありません。
税負担が増えることで、夫婦共有財産として手元に残る現金が減り、結果として、財産分与や解決金の原資が目減りするため、受け取る側にも間接的なデメリットとなりえます。
離婚する意思が固まっている場合でも、可能であれば年明けの離婚届提出を検討することが、結果的に双方の利益を守ることにつながる場合もあります。

