年末年始の休みに"有給の強制消化"「12月30日は全員取得しろ」こんな会社の指示はアリなの?

年末年始の休みに"有給の強制消化"「12月30日は全員取得しろ」こんな会社の指示はアリなの?

「年末年始の休暇なのに、なぜか1日だけ強制的に有給休暇を使わされる」

会社が定めた「全社員一斉有給」の制度に対する疑問が、弁護士ドットコムに寄せられています。

相談者の勤め先では、年末年始の休暇は12月29日から1月3日まで。そのうち12月30日だけは、社員全員が「有給休暇消化日」として指定され、強制的に有給を取得しなければならないといいます。

会社が従業員の有給取得日を強制的に決めることに、法的な問題はないのでしょうか。労働問題にくわしい嶋本敦弁護士に聞きました。

●会社は基本的に有給休暇の取得日を強制できない

──有給休暇は、必ずしも自分の好きなタイミングで使えるものではないのでしょうか。

年次有給休暇(労働基準法39条)は、要件を充たせば、法律上当然に労働者に付与される権利です。

原則として、「いつ取得するか」を決めるのは、労働者であり、使用者は、その取得希望日(時季)に有給休暇を与えなければならないとされています(労働基準法39条5項本文)。

したがって、今回のケースのように、会社が特定の日を「一斉取得日」として一方的に指定し、有給取得を強制することは、基本的には認められません。

この原則に例外がないわけではありません。ただし、いずれも会社が一方的に決められるものではないことに注意が必要です。例外といえそうな3つの場面を説明します。

【1】労働者の時季指定に対する「会社の時季変更権」

労働者が「特定の日に有給を取得したい」と指定した場合でも、その日に取得されることで「事業の正常な運営を妨げる場合」には、会社は取得日を変更して、別の日に与えることができるとされています(労働基準法39条5項ただし書き・時季変更権)。

ただし、ここにいう「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、単なる「人手不足で困る」といった程度では足りず、事業運営に不可欠であり、かつ、代替要員の確保も困難な場合など、非常に限定的です。

年末年始の休暇中に「会社都合で1日だけ強制的に有給を消化させる」という今回のケースは、この時季変更権の要件を充たすとは考えにくいでしょう。

【2】労使協定に基づく「計画年休」制度」

労働者が自由に使える5日を超える有給休暇については、労働者側と会社側が労使協定を結ぶことで、有給取得日を計画的に定める「計画年休」制度が利用できます(労働基準法39条6項)。

この労使協定が締結されていれば、一人ひとりの労働者を拘束する効力が生じて、相談にある「12月30日の指定」も有効となり得ます。

ただし、計画年休制度の利用のためには労使協定の締結が必須で、会社が一方的に定められるものではありません。過半数労働組合または労働者の過半数代表者との書面による協定が必要です。

【3】使用者による時季指定(5日取得義務への対応)

2019年4月施行の改正労働基準法により、有給休暇が年10日以上付与される労働者については、使用者が最低5日間を確実に取得させる義務が課されています。

この義務を果たすため、労働者がまだ5日以上の有給を取得していない場合に限り、会社は取得時季を指定して有給休暇を与えなければなりません(労働基準法39条7項)。

ただし、この方法も使用者が一方的に決められるものではなく、労働者の個別の意見を聴取してその意見を尊重しなければならないとされています。今回のケースのように会社が一方的に特定の日を「一斉有給休暇」と指定するようなことは望ましくありません。

また、そもそもこの時季指定は、上記のとおり、その1年に、労働者がまだ5日以上の有給休暇を取得していない場合に限り指定できるものなので、12月30日までに5日以上の有給休暇を取得している労働者は対象外となります。

──やはり結論として、12月30日に「全社員一斉有給」を強制することはできないということですね。

会社が「全社員一斉有給」という名目で、労働者の時季指定や労使協定を経ずに一方的に有給休暇の取得日を設定することは、法的に無効と考えられます。

もし疑問がある場合は、就業規則や労使協定の有無を確認したうえで、労働基準監督署や労働問題にくわしい弁護士に相談することが重要です。

【取材協力弁護士】
嶋本 敦(しまもと・あつし)弁護士
2008年弁護士登録(大阪弁護士会所属)。事業会社での法務・総務経験を活かし、スピード感をもって、実務に具体的に役立つ解決策をご提案します。
事務所名:弁護士法人ブライト
事務所URL:https://law-bright.com/

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