眠っている間、「私」の自我はどこで、なにをしているのか?|櫻井武

眠っている間、「私」の自我はどこで、なにをしているのか?|櫻井武

意識というスポットライトはなにを照らすのか?

意識は、広大な脳活動の中で、わずかな範囲を照らすスポットライトのようなものだ。
その光が届く場所こそ、私たちが「今考えている」「感じている」と認識する領域である。しかしその範囲は驚くほど狭い。なぜならば、私たちが認知や思考に用いる「作業記憶」はせいぜい7±2個の要素を、わずか数十秒しかとどめられないからだ。
だから脳は、注意という選別装置で何を舞台に上げるかを決めている。
その外側には、言葉にならない感情や思考の欠片が漂う薄明かりの層――潜在意識が広がり、さらにその下には計り知れない無意識の海がある。

眠っているあいだに更新される「私」

眠りは、このスポットライトを完全に消し、無意識の深みに身をゆだねる時間だ。
だが意識は消えても脳は沈黙しない。シナプスを整理し、記憶を整理し、感情を織り直し、経験を未来に備えて組み替えていく。眠る前の自分を「自己N」とするなら、目覚めた自分は「自己N+1」に生まれ変わっているかもしれない。それでも私たちは、その変化を感じ取らない。

Sleeping newborn boy 2 months old with toy on white background close up and copy space 99813132

自己の物語をつなぎ止めているのは、記憶と文脈だ。時間感覚は曖昧でも、「しかるべき時間が経った」という確信が、私たちの連続性を保証している。

配信元: 幻冬舎plus

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