
人の流れにまかせて拝殿へ進んだものの、いざ最前列に立つと急に作法がぼんやりしてしまう——初詣ではそんな“プチ迷子状態”が起こりがちです。「まず何をすればいいんだっけ?」「この手順で合ってる?」と、毎年悩んでしまうという声もよく聞きます。そこで、「現代礼法研究所」主宰・岩下宣子先生に、神前での正しい作法について詳しくうかがいました。
本殿に参拝するときに気をつけたい5つのこと
お賽銭の前に鈴を鳴らす拝殿に着いたら、まず軽く会釈をして心を整えます。
鈴が備えられている神社では、お賽銭より先に鈴を鳴らすのがより丁寧な作法です。
鈴の音には邪気を払う役割があるとされ、神様をお呼びする合図にもなるからです。
お賽銭の金額に決まりはなく、高額である必要もありません。
たくさんお賽銭を入れれば御利益もたくさん…というわけではないからです。
無理のない範囲で気持ちを添えるのがいいでしょう。
名乗らずにお願いをするのはマナー違反
お賽銭を入れた後は、姿勢を正し、2度深くお辞儀をします。
両手を胸の高さまで上げ、2度拍手を打ちます。
この後、両手を合わせたまま祈念をしますが、いきなりお願いごとをするのは避けましょう。
まずは心の中で、自分の住所と名前を神様に告げ、誰がお参りに来たかを明らかにするのが礼儀です。
その後、昨年守護してくださったことへのお礼や、無事に新年を迎えられたことへの感謝の気持ちをお伝えします。
お願いごとをするのはその後です。
祈念を終えたら、ゆっくりと手を戻し、姿勢を正して再び深くお辞儀をします。
願い事はひとつに絞って
神様にお願いごとをする際には、あれもこれもと欲張るのはやめましょう。
一度に多くを求めるのではなく、本当に大事な一つのことだけ、心を込めて祈念するのが望ましい、と岩下先生は言います。
「『~を叶えてください』と一方的に神様に何かを求めるのではなく、『~が達成できますよう、お力添えください』というふうに、丁寧に祈りましょう。願いが成就したら、お礼参りも忘れずに。すると神様とのご縁が続いていきますよ」
神社での参拝の流れを確認しておこう
参拝の手順をまとめると、次のようになります。
事前に一度おさらいしておきましょう。
■参拝の手順
・拝殿の前で軽く一礼する

・鈴を鳴らし、静かに賽銭を納める

・深く2回、頭を下げる

・両手を合わせ拍手を2回打つ

・両手を合わせて祈念する

・深く一礼し、少し後ろへ下がり、会釈をしてから拝殿から退く

・鳥居をくぐって出たら一礼する

拝む位置にも気を配りましょう。
神様が宿る鏡(銅鏡)の真正面は避けて。
鏡の位置がわからない場合は、賽銭箱の中央を外して立つのが無難です。
なお、神社によっては独自の作法がある場合もありますので、社務所の案内などに従ってください。
神社の後にお寺へお参りしてもOK
新年にお迎えした年神様は、稲の神様であると同時に、祖先の霊でもあるといわれています。
そのため、神社を参拝した後に、先祖のお墓があるお寺を参拝しても問題ありません。
「お寺でも、神社とほぼ同じ流れで参拝できますが、大きく異なるのは『拍手をしない』点です。合掌し、命のつながりと現在の自分の生活、生きていることへの感謝を伝えてから、『どうか見守ってください』とお願いしましょう」
参拝後はお墓をきれいに掃除して、花立に松をいけると、さらにご先祖が喜んでくれます。
ただし、お寺も宗派ごとに作法が異なることがあるため、事前に確認しておくと安心です。
※ ※ ※
初詣は、神様の前で願いごとを述べるための行事ではありません。家族の健康や日々の無事を神様に感謝し、清らかな気持ちで新しい一年を始めるための儀式です。正しい作法を知っておけば、神様への挨拶も自然と美しいものになります。ぜひ服装や心を整えてから神社に向かいましょう。

教えてくれたのは…
▶岩下宣子先生
「現代礼法研究所」主宰。NPOマナー教育サポート協会理事・相談役。30歳からマナーの勉強を始め、全日本作法会の故・内田宗輝氏、小笠原流・故小笠原清信氏のもとでマナーや作法を学ぶ。現在はマナーデザイナーとして、企業、学校、公共団体などで指導や研修、講演会を行う。『40歳までに知らないと恥をかく できる大人のマナー260』(中経の文庫)、『相手のことを思いやるちょっとした心くばり』(三笠書房)など著書多数。近著に『77歳の現役講師によるマナーの教科書 本当の幸せを手に入れるたったひとつのヒント』(主婦の友社)。
文=高梨奈々 イラスト=前川さなえ

