話を聞いた永島祥子さんは、高校時代から続く頭痛に悩まされ、2024年に脳動脈瘤と診断されました。そんな永島さんには、全介助が必要なお子さんがいます。お子さんを抱えながらの闘病、子どもへの想い、これまでの体験を語ってもらいました。
※2025年5月取材。
体験者プロフィール:
永島 祥子
東京都在住、1982年生まれ。診断時の職業は専業主婦。2024年7月、脳幹に近い小脳部分に成長中の脳動脈瘤が発覚し、血管内手術(ステント留置とコイル塞栓術)を受けることを決意。手術の合併症で軽い小脳梗塞を起こすも、高次脳機能や運動機能に大きな後遺症は残らずステント留置も動脈瘤もMRI上では経過良好。高校生のときから慢性的な頭痛に悩まされてきたが、脳の血流が全体的に改善されたこともあるのか頭痛がほぼゼロに。
日常生活に支障をきたすほどの頭痛。セカンドオピニオンの末に判明した病名は
編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
永島さん
2024年5月頃、左の首筋から後頭部にかけてズキズキとした痛みが始まりました。異常を感じて、6月に町の脳神経外科を受診。MRI検査の結果、右側の太い血管に脳動脈解離があると診断され、医師から「絶対安静」との指示を受けました。血管が裂ければ命に関わるため、力を入れることを避けるようにと言われました。しかし、不安が募り翌日セカンドオピニオンを受けると、左側の脳幹近くの小脳の血管分岐部に9mmの脳動脈瘤があることが判明しました。「瘤が破裂すると、くも膜下出血につながる可能性がある」と説明され、手術には「開頭手術(クリッピング術)」と「血管内手術(コイル塞栓術)」の選択肢があることも教えてもらいました。
編集部
そこからどうなったのですか?
永島さん
7月、手術前の脳カテーテル検査で脳動脈瘤が1カ月で9mmから13mmへ急成長していることが判明。担当医から「破裂していたら脳幹が近いため、命を落とす危険があった」と言われ、手術の必要性を強く感じました。そして8月2日、血管内手術(ステント留置とコイル塞栓術)の手術を受けました。瘤の周囲には多数の細い血管が形成されており、それらを慎重に確認しながら、重要な血管を残しつつコイルで瘤を完全に塞ぐ処置がおこなわれました。幸い、手術は無事成功しました。
編集部
成功に終わってよかったですね。
永島さん
ところが手術当日の夜にステントの影響で小脳梗塞を発症し、ICUで治療を受けました。術後は、手の力が入らない状態やふらつき、しびれ、言葉が出にくいなどの症状がありましたが、リハビリテーション(以下、リハビリ)に励み、高次脳機能や運動機能に大きな障害は残りませんでした。慢性的な頭痛もなくなり、生活の質が向上したと感じています。
編集部
最初に診断がついたときの心境について教えてください。
永島さん
「頭に爆弾を抱えて生きているようなものだ」と感じました。「瘤が破裂したらどうしよう」と不安に襲われましたが、医師は「気にしすぎず、ストレスをためないで、無理をしないように」と優しく声をかけてくれました。私は、全介助が必要な脳性麻痺の息子(取材時11歳)を育てています。子どもは成長とともに重くなり、脳動脈瘤を抱えながらの子育てに、正直、絶望を感じました。
編集部
それは苦労されますね。
永島さん
ただし、瘤を塞げば「くも膜下出血」のリスクはほぼなくなるということも理解していました。そのため、迷わず手術を決意しました。息子が体調を崩すことも減り、学校に安定して通えるようになった今が最適なタイミングだと考えました。脳性麻痺の子どもを育てる母親として、手術やリハビリの知識もあり、仮に後遺症が残っても息子の体調が安定している今なら、自分も日中にリハビリへ励み、回復できるはずだという直感がありました。
編集部
診断されるまでに自覚症状などはあったのでしょうか?
永島さん
2024年5月頃から、左の首筋から後頭部にかけてズキズキとした痛みが始まり、日常生活に支障をきたすほどでした。ロキソニンを毎食飲んでも効かず、頭を抱えて寝込むほどの状態でした。おそらく脳動脈瘤や脳動脈解離の影響による痛みだったのではないかと思います。翌月からはロキソニンが効く日が出てきて、7月には頭痛の頻度が減りました。この時点で検査を受けず、治療に踏み切っていなかったらと思うとゾッとします。早期の診断と治療に進んだことで命が助かったのだと強く感じています。
「この子の育児を、ずっと元気で続けたい」その想いが病気を乗り越える力に
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
永島さん
医師からは、「手術をすべきかどうか」という意見は示されず、事実だけを伝えられました。開頭手術(クリッピング術)と血管内手術(コイル塞栓術)の説明を受け、「患者さんに負担の少ない方法を中立な立場で判断して決める」と言われました。私は開頭手術(クリッピング術)を希望しましたが、医師からは「まずは検査で瘤の状態を詳しく確認して最適な方法を決めるのが先」と説明されました。結果、瘤は太い血管の分岐部分にあり、複雑に血管が絡んでいたため、血管内手術(コイル塞栓術)を選択しました。
編集部
手術を進言するのも勇気が要りそうです。
永島さん
リスクの説明は最低限で、過度に不安を煽られなかったことで、手術に踏み切る決意を固められたのかもしれません。手術は慎重に進められました。術後に脳の画像を見せてもらい、血管が美しく整えられ、瘤の周囲の血管は丸く残され、その中心がコイルでしっかり埋められている様子を見て、「綺麗に処置してもらえた」と安心しました。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
永島さん
降圧剤を毎日服用し、高血圧を回避する生活を心がけています。以前は、「丈夫で元気な母親だ」と過信していましたが、睡眠を優先し、健康に過ごすことを意識しています。子育てが始まってから、過労や緊張で高血圧気味となり、「ストレスや過労」が原因だと診断されました。
編集部
これまでの自分の行動などに後悔はありますか?
永島さん
30代前半から降圧剤を処方されていましたが、服用を怠り、血圧管理を軽視していました。今振り返ると、「高血圧=命に関わる」という認識不足が最大の問題でした。「薬=内臓を悪くする」「ステントなどの医療機器を入れる=寿命が縮まる」といったイメージに引っ張られず、医学的な視点から物事を丁寧に理解し、適切に向き合うことが大切だと痛感しています。
編集部
治療・病気に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。
永島さん
一番の支えは息子の存在です。病気を乗り越える過程で、抱っこや介護、食事、リハビリに連れて行く—その全てができること自体が幸せなのだと気づき、「この子の育児をずっと元気で続けたい」と思うようになりました。手術後、一時的に左手の力が入らず、息子の車椅子への移乗ができない時期がありましたが、息子が学校に行っている間にリハビリを続け、退院後は杖を使いながら徐々に回復。看護師さんやデイサービスのスタッフさんなど、今では誰もが「去年脳梗塞をしたこと」を忘れているほどです(笑)。障害のある息子の存在は、負担に感じることもありましたが、結果として、自分の回復を後押ししてくれる大きな力になりました。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
永島さん
「肩の力を抜いて、周りの評価を気にしすぎないで」と伝えたいです。もっと早く周囲の人に頼ることを覚えていればよかったと思います。脳動脈瘤が判明して初めて息子をショートステイにお願いし、福祉サービスの大切さを痛感しました。治療や療養に専念できたのは、放課後デイサービスや訪問事業所のおかげです。病気を経験し、親の健康が子どもの人生に大きな影響を与えることを深く理解しました。社会全体で子育て世代の健康を支える仕組みがもっと必要だと感じています。

