履き違えてはいけない、エイジレスファッションの意味
支持が高まる、エイジレスファッション。しかし、筆者はこれに対して手放しで賛同できない部分があります。年齢なんて気にせずに好きな服を着ればいい! と、人は言いますが、それが正義ならどうして今もなお、誹謗中傷の声が生まれるのか。
ファッションというのは、「自分の個性を主張する服装」と「周囲に配慮した服装」という、相反する2つの軸が常に存在しています。好きな服を着て批判が起きるのは、後者の「周囲に配慮した服装」から大きく外れているケースが考えられますね。私たちは社会で生きる上で、人との関わりをなくすことはできません。そのため、他者が自分と一緒の空間にいて心地よくいられるかどうか、最低限の配慮は必要になります。それは服装においても言わずもがな、です。
好きな服を着ていても誰かの迷惑にはなりませんが、それでも周囲が驚くような格好や、場にそぐわなくて相手に気まずい思いをさせる服装などは、やはり配慮に欠けていると捉えられます。服装のマナーは大人なら言われなくともわかるものであり、それさえも守れないのは、好きな服を着た代償として村八分をくらうことも心に留めておく必要があるのです。
正しいエイジレスファッションの取り入れ方
エイジレスファッションは、好きな服を着ていいという“無制限の自由”を推奨するものではありません。むしろ、年齢によって差が生まれない、服装の均質化にすぎないのです。どの年齢層の人が着ても違和感のない服。時代が経過しても耐久性に優れている服。オフィスでも普段着にも向いている活用シーンに多様性がある服。こうした均質化された服が本来のエイジレスファッションなのではないでしょうか。もちろん、年齢を気にして過敏に服を限定する必要はありません。ですが多様性社会だからといってハメを外しすぎないよう最低限の配慮(清潔感と目のやり場に困らないもの)は忘れずに。その上で自由な着こなしを楽しむのが最も正しく、スマートなエイジレスファッションの楽しみ方だと筆者は感じます。
<文&イラスト/角佑宇子>
【角 佑宇子】
(すみゆうこ)ファッションライター・スタイリスト。スタイリストアシスタントを経て2012年に独立。過去のオシャレ失敗経験を活かし、日常で使える、ちょっとタメになる情報を配信中。2023年9月、NHK『あさイチ』に出演。インスタグラムは@sumi.1105

