お笑い芸人の「バキ童」ことぐんぴぃさんが、自身のYouTubeチャンネル「バキ童チャンネル」で彼女ができたこと報告し、祝福の声が溢れています。
ぐんぴぃさんは街頭インタビューで性交渉の有無について聞かれた際、「バキバキ童貞です」と答えた映像がネットミーム化。「バキ童」の愛称で親しまれてきました。
そんなぐんぴぃさんのまさかの「卒業」報告に、動画のコメント欄は祝福の声にあふれる一方で、「裏切られた」など悲嘆にくれるコメントもみられました。
ぐんぴぃさんが卒業したことに傷ついたファンはぐんぴぃさんに慰謝料を請求できたりするのでしょうか。また、卒業してしまった今後も「バキ童」を名乗ることは法的に問題ないのでしょうか。詳しく分析しました。
●ファンからぐんぴぃさんへの損害賠償請求は認められない
裏切られた、という気持ちはよく分かりますが、いったん落ち着いて法的に検討してみます。
ファンからぐんぴぃさんへの請求は、「不法行為に基づく慰謝料請求」(民法709条、710条)というものになります。この請求が認められるためには、「権利」または「法律上保護される利益」の侵害が必要です。
似たような事例(というのは語弊があるかもしれませんが)として、アイドルのファンが、推しのアイドルが交際・結婚したことで深く傷ついた場合、が挙げられます。
調べた限り実際にこの点が争われた裁判は見当たりませんでしたが、参考となる文献は見つかりました。
「マンガ・アニメで民法入門 - 法学セミナーe-Book No.56」(日本評論社、2024年5月)内の「【推しの子】から考える民法の諸問題(加藤雅之(日本大学教授))」では、アニメ「推しの子」(赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社、2020年)を題材に、アイドルの清純なイメージを信じていたファンからの、アイドルに対する損害賠償請求が認められるかを検討し、一般論として以下のように述べています。
「ファンがアイドルに対して有する疑似恋愛感情や清廉さを求める利益は法的保護の必要が高いとは言い難いであろう。また、アイドルであっても恋愛する自由を有するのであるから、交際をするなどの行為自体が悪質なものとはいえないため、不法行為の成立は認めがたい」としています。
「法的保護の必要はある!」と思う方も多数いらっしゃるとは思うのですが、該当する裁判例も見当たりませんでした。
ぐんぴぃさんの話に戻りますが、アイドルの場合と同様に、損害賠償請求は認められないと考えるべきでしょう。
●この後「バキ童」を名乗れるのか!?
ぐんぴぃさんは、「卒業」した場合にはYouTubeチャンネルを閉鎖する旨を示唆していましたが、この卒業報告のYouTube動画では、本当の幸せみたいなものがまだわかってない気がするので、そこを学んでいくチャンネルになるかもしれない、として、チャンネルが続くと話しています。
既に「卒業」してしまったのだから、「バキ童」と名乗ることは許されないのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。YouTube動画のコメントにも「ほぼ景品表示法違反だろ」という声があがっていました。
結論からいえば問題ないといえますが、中には、どうしても許せないという方もいるかもしません。ここはあえて強引に、景品表示法の「優良誤認」を持ち出して検討してみます。

