●商標法の考え方は参考になりそう
実態と異なる名称を使用することは全く許されないのか、というと、そうでもありません。 そういう意味では、商標法の考え方は参考になります。(※本件に直接適用される法律ではありません)
たとえば、「東京ディズニーランド」は千葉県にありますが、「東京ディズニーランド」という名称は商標登録されています(第5460985号、第5757845号)。
商標法上、登録を受けることができない商標があり、その中には「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」(4条1項16号)という規定があるのです。
千葉にあるのに、「東京」ディズニーランドでは、そのような誤認が生じるおそれがあるのでは?とも思えます。
しかし、ここでの「東京」が厳密な住所ではなく、広義の首都圏商圏やブランドを指す概念だと広く認知されており、品質などの誤認を生ずるおそれがあるとはいえないと判断されたからでしょう。
これをバキ童さんに当てはめてみましょう。実際には「卒業」しているとしても、彼の芸風は、依然として「バキバキ童貞」という概念の中にあります。
東京ディズニーランドが「夢の国」であるように、「バキ童」もまた物理的事実を超越した「コンセプト」だと考えることができます。
●一般的な名称でも特別な意味を持つ場合もある
商標法では、単に商品の品質や産地、販売地、形状などを表示するものは、原則として商標登録を受けられません(同法3条1項3号)。
しかし、本来は「産地」や「品質」を説明しただけの言葉でも、使用され続けて、誰の商品なのかが広く認知されたような場合には、例外的に商標登録が認められる場合があります。
たとえば、「GEORGIA」(「ジョージア」。コーヒー、ココア(第2055752号))やロールケーキの「堂島ロール」(第5446720号)が挙げられます。
前者はアメリカの地名であり、後者は「大阪市の地名+ロールケーキという一般名称」ですが、今は多くの人が特定の「あのコーヒー」や「あのロールケーキ」を思い浮かべます。
「バキ童」も同じように考えられるかもしれません。当初は「童貞」という「一般的な状態の説明」でしたが、今や「ぐんぴぃ」さんという芸人そのものを指す言葉へと進化しました。
無理矢理検討してきましたが、法的には今後も「バキ童」を名乗り続けることに特段の問題はないと考えられます。
GEORGIAや堂島ロールが元々の意味を超えて進化し、多くの人に愛され続けているように、彼もまた「バキバキ童貞」という看板を超えて、芸人として愛されているということでしょう。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

