前立腺がん治療費の「上限」を知っていますか? 高額療養費制度の賢い使い方

前立腺がん治療費の「上限」を知っていますか? 高額療養費制度の賢い使い方

高額療養費制度は、医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合に、超過分が払い戻される公的な制度です。年齢や所得区分によって自己負担限度額が設定されており、事前に限度額適用認定証を取得しておけば、窓口での支払い時点から負担を抑えることができます。

新村 浩明

監修医師:
新村 浩明(ときわ会 常磐病院)

ときわ会常磐病院院長
いわき市医師会副会長
いわき市病院協議会副理事

【経歴】
平成5年富山大学医学部卒
平成5年東京女子医科大学泌尿器科入局
平成17年9月ときわ会 いわき泌尿器科病院
平成23年6月ときわ会 常磐病院(福島県いわき市)
平成27年9月ときわ会 常磐病院院長就任

【資格】
日本泌尿器科学会 専門医・指導医
日本透析医学会 専門医・指導医
日本臨床腎移植学会 認定医
日本核医学会 PET核医学認定医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医
日本内視鏡外科学会 技術認定医

高額療養費制度の仕組みと申請方法

高額療養費制度は、医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合に、超過分が払い戻される公的な制度です。この制度を活用することで、前立腺がんのような高額な治療を受ける際の経済的な負担を軽減できます。

自己負担限度額の計算方法

高額療養費制度における自己負担限度額は、年齢や所得区分によって異なります。70歳未満の方の場合、所得区分に応じて月ごとの自己負担限度額が設定されており、例えば標準報酬月額が28万円から50万円の方であれば、自己負担限度額は約8万円に医療費総額から26万7,000円を引いた額の1%を加えた金額となります。

所得が低い方ほど限度額は低く設定され、住民税非課税世帯の場合には約3万5,000円が上限となります。70歳以上の方の場合には、さらに負担上限が引き下げられ、一般所得の方であれば月額5万7,600円、現役並み所得の方でも一定の上限が適用されます。これらの限度額を超えた分は、申請により後から払い戻される仕組みです。

申請の手順と注意点

高額療養費の申請方法には、事後申請と事前の認定証利用の2つがあります。事後申請は、医療費を支払った後に、加入している健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険などに申請書を提出し、払い戻しを受ける方法です。通常、申請から払い戻しまでには3か月程度かかります。

一方、事前に「限度額適用認定証」を取得しておけば、医療機関の窓口での支払い時点で、自己負担限度額までの支払いで済むため、一時的な立て替えが不要になります。限度額適用認定証は、加入している保険者に申請すれば発行されるため、入院や高額な治療が予定されている場合には、事前に取得しておくことが推奨されます。複数の医療機関を受診している場合や、同一世帯で複数の方が高額な医療費を負担している場合には、世帯合算や多数回該当の制度を利用できることもあります。

まとめ

前立腺がんの診断を受けた際には、誰もが不安を感じるものです。しかし、早期に発見し適切な治療を受ければ、良好な経過をたどることができるがんの一つでもあります。治療法は多岐にわたり、手術療法、放射線療法、ホルモン療法など、患者さんの状態や希望に応じた選択が可能です。

費用面では、高額療養費制度や医療費控除、民間保険を活用することで、経済的な負担を軽減できます。前立腺がんは初期症状に乏しいため、定期的なPSA検査による早期発見が何よりも重要です。不安や疑問があれば、泌尿器科の専門の医師に相談し、納得のいく治療を選ぶことが大切です。ご自身の身体と向き合いながら、医師や医療スタッフと協力して、より良い治療と生活を目指していきましょう。

参考文献

前立腺がん 基礎知識:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ

前立腺がん|日本泌尿器科学会

高額療養費制度を利用される皆さまへ |厚生労働省

配信元: Medical DOC

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