「子どもの歯並び」への『早期歯科介入』とは? メリット・デメリットを歯科医が解説

「子どもの歯並び」への『早期歯科介入』とは? メリット・デメリットを歯科医が解説

「子どもの歯並び、気になるけど矯正はまだ早いかも……」。その様子見が、じつは大切な成長の機会を逃しているかもしれないことをご存じでしょうか? 子どもの歯並びは、あごの成長が活発な“ゴールデンエイジ”に適切な対応をおこなうことで、将来必要となる治療の負担を減らせる可能性があります。今回は、歯並びの乱れを未然に防ぐ「早期歯科介入」の重要性について、さくらぎファミリー歯科の櫻木先生に解説してもらいました。

※2025年10月取材。

≫【1分動画でわかる】「子どもの歯並び」への『早期歯科介入』とは? 櫻木 慎也

監修歯科医師:
櫻木 慎也(さくらぎファミリー歯科)

広島大学歯学部卒業後、京都府立医科大学附属病院へ入局。大阪の歯科医院勤務を経て、2021年7月に「さくらぎファミリー歯科」を開院。一般歯科からインプラント、審美、矯正に至るまで幅広い治療に対応している。おおやけこども園 / 岩屋こども園アカンパニ連携歯科医院。インビザライン認定ドクター。
所属は日本歯周病学会、日本先進医療機関JIADS(The Japan Institute for Advanced Dental Studies)ほか多数

将来の歯並びを左右する? 成長期におこなう「早期歯科介入」とは

将来の歯並びを左右する? 成長期におこなう「早期歯科介入」とは

編集部

子どもの歯並びにおける「早期歯科介入」とはどのような治療なのでしょうか?

櫻木先生

歯そのものを動かすのではなく、将来歯がきれいに並ぶための土台をつくることが早期歯科介入の大きな特徴です。具体的には、あごを広げたり形を整えたりしながら、永久歯が正しく並ぶためのスペースを確保します。さらに、指しゃぶりや口呼吸など、歯並びを悪くするクセや習慣の改善にも取り組んでいきます。

編集部

歯を直接動かすのではなく、歯がきれいに並ぶための土台を整えていくのですね。なぜ、早い時期におこなう必要があるのでしょうか?

櫻木先生

あごの成長は限られた時期にしか促せないため、5~7歳ごろの成長の盛んな時期におこなうのが理想的です。とくに上あごは、この時期にしか広げられない骨のつなぎ目(縫合線)があり、成長の力を利用することであごを広げることができます。一方で、9~10歳を過ぎると成長がある程度落ち着いてしまうため、永久歯が生えそろってから歯を抜いて矯正するケースも増えていきます。そのため、できるだけ早い段階で関わってあげることが大切なのです。

編集部

早期歯科介入では、具体的にどのような治療や指導をおこなうのでしょうか?

櫻木先生

代表的なものに、マウスピース型の装置とお口周りの筋肉のトレーニングを組み合わせて、歯並びが悪くなる根本の原因に働きかける治療法があります。また、「拡大床(かくだいしょう/写真)」と呼ばれる、ネジを回しながら物理的にあごの幅を広げる装置を使用することもあります。どの装置や治療法を選択するかは、お子さんのお口の状態や成長の度合いに応じて歯科医が判断していきます。

顔つきや睡眠にも影響? 「早期歯科介入」のメリットと注意点

顔つきや睡眠にも影響? 「早期歯科介入」のメリットと注意点

編集部

わりと早い時期から歯科が介入することで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?

櫻木先生

大人の矯正ではスペースを確保するために歯を抜かなければならないことも多いのですが、成長期に介入すれば歯を抜かずに歯並びを整えられる可能性が高くなります。また、成長期に正しい呼吸法や舌の位置、嚥下(飲み込み方)をトレーニングすると、下あごが自然に上あごにあわせて成長し、顔つきの印象がよくなる可能性もあります。さらに近年は、正常な呼吸(鼻呼吸)ができることで睡眠の質が改善し、心身の成長や注意力の改善につながる可能性も指摘されています。

編集部

とはいえ、幼い時期の早期介入はデメリットもありそうですが、これについてはいかがですか?

櫻木先生

たしかに、5歳ぐらいだとまだ治療の必要性を理解するのは難しい年齢です。そのため、保護者の協力が不可欠なのですが、親御さんが熱心になるあまり、お子さんとの関係がぎくしゃくしてしまうという話もよく耳にします。その点については十分注意が必要ですが、ただ個人的に、早く始めること自体にあまりデメリットは感じていません。

編集部

デメリットは感じないとのことですが、お子さん自身が治療の意味を理解できないと、モチベーションを保つのが難しいように思います。その点についてはどうお考えですか?

櫻木先生

おっしゃるように、5歳ごろだと集中力や理解力が十分ではないため、最初からうまくいかないことも多いでしょう。しかし、私はこれをデメリットではなく、むしろメリットだととらえています。なぜなら、早く始めるからこそ治療期間に十分な余裕が生まれるためです。トレーニングなども含めていきなり完璧を目指すのではなく、お子さんのペースに合わせて少しずつ進めていけるのが、早期介入の大きな利点と考えています。

配信元: Medical DOC

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