食中毒とは、有害な微生物などを含む飲食物を食べてしまったときに生じる病気です。誰しもかかる可能性があり、症状も幅広く発症します。
予防するためにも、食中毒になるとどうなるのかなどを把握することが大切です。
そこで本記事では、食中毒になるとどうなるのかをご紹介します。判断するポイントや治療方法を解説するので参考にしてください。
※この記事はメディカルドックにて『「食中毒」になると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
食中毒の診断と治療方法

食中毒と判断するポイントはどんなところですか?
基本的には医師による判断の方が、確実に食中毒であるかを判断できます。しかし、自分でも次のようなポイントで判断が可能です。食中毒の原因となりそうなものを口にしているか
同じものを食べた方にも同様の症状があらわれているか
まず、食中毒の原因となりそうなものを口にしているかどうかが挙げられます。症状が現れた時期をもとに、直近で食べたものを思い返してみると良いでしょう。牡蠣やアニサキスがいる魚(サバなど)などを口にしているようであれば、食中毒が考えられます。
また、同じものを食べた方にも同様の症状が現れているかも判断のポイントです。一緒に食事した方にも症状が現れているのであれば、食中毒の可能性が高いです。
検査をするときはどんなことを行いますか?
主な検査内容は、次のようなものが挙げられます。血液検査
尿検査
画像検査
便培養検査
体内の炎症の強さ・肝機能機能・腎機能を確認するため、血液検査や尿検査を行うのが一般的です。金属などの化学物質による食中毒が疑われる場合には、体内のイオン濃度を調べる場合もあるでしょう。画像検査は、レントゲン・CT検査・内視鏡検査を行います。
食中毒で発症する下痢や嘔吐は、他の病気によっても発症します。そのため、他の病気の存在を確認するために画像検査を行うのです。アニサキスでは虫体を取ることで治癒しますし、カンピロバクター腸炎では回盲弁のびらんなど特徴的な所見が見られます。
また、腸の炎症症状の度合いを調べることもできるので、他の炎症性腸疾患との鑑別にも有用で食中毒の重症度も確認できます。便培養検査は、便を採取してウイルスや細菌の正体を特定する検査方法です。食中毒の確定には必要で、治療方針を決めるためにも非常に重要です。
治療の方法を教えてください。
食中毒の治療方法は、基本的には水分補給や点滴などの対症療法が行われます。重症化が懸念される場合には、原因に対する抗菌薬を使う治療と点滴などを併せて行います。しかし、水分補給や点滴などの対症療法であっても、身体の機能により下痢や嘔吐によって体内の菌を排出しようと働いているのです。そのため、対症療法が基本的な治療となります。
重症化することは少ないというのは本当ですか?
重症化するケースは稀です。これは、ある程度の症状であれば先述した対症療法で治癒する可能性が高いためです。医療機関での適切な治療を行っていれば、さらに重症化リスクは低くなります。しかし、先述したように乳幼児や高齢者などの抵抗力が弱い方は重症化する可能性があります。また、症状が風邪などに似ているため、食中毒と気づかずに重症化するケースも稀にあるため注意が必要です。
編集部まとめ

食中毒は、腹痛・嘔吐・下痢・発熱などの症状を引き起こすことが多い病気です。
風邪などの症状と間違われやすいですが、決して甘く考えてよい病気ではありません。対症療法で治すケースもありますが、稀に重症化する場合もあります。
特に乳幼児や高齢者は、悪化のリスクが高いため注意が必要です。家族で食中毒を発症した場合でも、適切な対処ができるように正しい知識を身につけましょう。
また、万が一異変を感じた場合には、すぐに受診して治療を進めましょう。
参考文献
食中毒(厚生労働省)
「食中毒について」(全日本病院協会)
感染性腸炎(日本大腸肛門病学会)

