
「足のあいだから後ろを覗くと異世界が見えるんだって」 放課後の公園。ある少年が、まことしやかに囁かれる都市伝説を口にした。友人は「ひとりでやれよ」と冷たくあしらうが、結局は押し切られ、二人並んでその儀式を実行することになる。 果たして彼らの視界には、何が映ったのだろうか。



本作『異世界を見る方法』は、スピーディーな展開と不穏な余韻を残すショートショートホラーだ。 読み終えた瞬間、背筋が寒くなるようなラストに対し、読者からは「えっ…」「わけがわからない」「どういうこと!!?」といった戸惑いと恐怖の声が上がった。 作者は『貧女ハウスへようこそ』(小学館)や『実録怪談 本当にあった怪奇村/新犬鳴トンネル』(竹書房)などの代表作で知られる三ノ輪ブン子さん(@minowabunko)。ホラーや都市伝説漫画の旗手である三ノ輪さんに、本作の制作秘話を聞いた。
■自己責任で試してほしい「股のぞき」
作中で描かれた儀式は三ノ輪さんの創作ではなく、「股のぞき」として実際に伝わる有名な風習だという。 三ノ輪さんは「異世界や幽霊を見る方法は、ほかにも面白いものがいくつもあるので、やってみると楽しいかもしれません」と語る一方で、「ただし、何が見えてしまっても責任は取りませんよ…」と意味深な忠告を付け加えた。 好奇心は猫をも殺すと言うが、安易に異界への扉を叩くのは避けたほうが賢明かもしれない。
■電車内の日常風景が「ホラー」に変わる瞬間
pixivに22作品ものショートショートホラーを投稿している三ノ輪さん。その独特なネタはどこから湧いてくるのだろうか。 発想の源泉は、日常のふとした瞬間に潜む「妄想」にあるようだ。 例えば、電車で向かいの席に座っている7人全員がスマホを見ている光景。それを見た三ノ輪さんは、「もし全員が同じページを見ていたら?」「もし一斉にカメラを私に向けてきたら?」といった、あり得ない状況を脳内でシミュレーションするという。 平穏な日常に「もしも」というノイズを走らせることで、恐怖の物語は紡ぎ出されているのだ。
■短いからこそ「キャラクター」を大切に
ショートショートを描く上でのこだわりについて尋ねると、三ノ輪さんは心境の変化を明かしてくれた。 描き始めた当初は、限られたページ数の中でいかに意外な展開を作るかという「構成」に集中しすぎていたという。しかし最近では、短い物語であってもキャラクターの性格や特徴をしっかり設定するように心がけているそうだ。 「そのほうが漫画らしく、キャラクターが魅力的に見えて読んでいて楽しいんじゃないか」と三ノ輪さんは語る。登場人物への感情移入が高まるほど、彼らを襲う悲劇もより際立つのだ。
ラストシーンの解釈を巡り、「どっちが見たのだろう」「覗いた瞬間に誰かの顔があったらどうしよう」と考察や恐怖コメントが相次いだ本作。 令和の視点で描かれる新たな恐怖の世界を、ぜひ体験してみてほしい。
取材協力:三ノ輪ブン子(@minowabunko)
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