発達障害を抱える子どもたちの支援では、課題の難易度設定が重要なポイントとなります。「難しすぎても、簡単すぎてもダメ」と言われる理由は何でしょうか? 適切な課題を与えることで、脳が活性化し、運動能力だけでなく社会的なコミュニケーション力が育つと言われています。本記事では、作業療法士の小玉武志さんに「発達の最近接領域」を活用した支援の実際について聞き、発達障害の子どもたちの成長を引き出すアプローチを探ります。

監修作業療法士:
小玉 武志(作業療法士)
認定作業療法士。作業療法学分野博士号取得。入所施設にて重度の肢体不自由および知的障害児・者の支援、通所支援施設にて発達障害児への支援の経験を持つ。また、非常勤講師として「発達障害作業療法学」「発達障害作業療法学演習」などの講義をおこなう。海外研修生として、世界の特別支援教育の教育現場などを視察し、2ヶ月かけて世界一周した経験を持つ。NPO法人カケルとミチル代表理事。
編集部
運動と認知的処理、運動とコミュニケーションについては理解しました。では実際、発達障害のある子の支援ではどのような点を意識しているのでしょうか?
小玉さん
子どもに運動をしてもらいたい場面でまず意識することは、取り組む課題の難易度の設定ですね。
編集部
難易度ですか。難しすぎると達成できない恐れもあると思うので、簡単な課題にするということでしょうか?
小玉さん
難しすぎる課題に取り組む必要はないのですが、簡単すぎる課題でも力は伸びにくくなります。そのため、少し頑張ればできそうな課題、という難易度の課題をうまく提示することを意識しています。
編集部
なるほど、少し頑張ることで試行錯誤する力を伸ばすということでしょうか?
小玉さん
そうですね。こういった適切な難易度の課題を「発達の最近接領域」と呼び、最も高いパフォーマンスを発揮することができ、学習効果が高いことが知られています。専門用語で「実行機能」と呼ばれる力を十分に発揮して課題に取り組むことで、脳の活性化を促し、運動だけでなく社会的なコミュニケーションの力が育っていくように支援をしています。
※この記事はメディカルドックにて《【親必見】「発達障害のある子が運動をすると良い理由」を作業療法士が解説》と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
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