G1馬「ツルマルボーイ」が、2025年11月24日に永眠しました。YouTubeでは、最期の24時間の様子が紹介され、記事執筆時点で31万回再生を突破し、1万件を超える“高評価”が寄せられています。
動画を投稿したのは、ツルマルボーイ(以下、ツルマル様)をはじめとした馬たちのシモベとして活動しているYouTubeチャンネル「しりある【ツルマル様のシモベ】」の「しりある」さん。以前には、引退競走馬たちに大きなブドウをあげた時の様子が話題になりました。
ツルマル様は1998年生まれの27歳。11月20日の動画で馬クッシング病であることを報告していましたが、23日の朝の体調は良好で、獣医師にもすすめられていたため、1時間ほど放牧を行いました。
お昼までは特に異常がなかったのですが、13時ごろに馬房内で前がき(地面をかく動作)を行っており、体調の変化が見られたので、獣医師の指示の元で処置を行ったとのこと。その後、17時くらいまでは落ち着いた状態でした。
18時を過ぎたころから発汗が目立ち、落ち着かない様子を見せはじめたツルマル様。19時に撮影を再開した時には、少しでも馬房を離れると大声で呼ぶような状態でした。最初は厩舎の電気を消して異変があったら駆け付けられるように隣のクラブハウスで待機をしていたのですが、ずっと大きな声で鳴くので、スタッフや獣医師と相談して、しりあるさんがそばにいることにしました。
獣医師に処置をしてもらうと、ほとんどの場合は回復に向かいますが、効果が出ないということは最期のときが近い可能性があるということ。回復に向かう可能性に賭けて、薄手の馬着を着せて体温調整をしたり、水桶に歯を押し付ける行動を止めさせたりして過ごします。
しりあるさんはこの夜、馬房に泊まることを決意。24時くらいまでは電気をつけて過ごし、夜中の3時ごろには発汗があったので拭いて、ヒーターで汗を乾かしました。
朝の6時30ごろ、獣医師に処置をしてもらいましたが、1時間様子を見ても状況は改善されなかったとのこと。それでも7時30分に馬場に出ると、ツルマル様が後を付いて来ます。
一度は落ち着いてくれましたが、少し歩いてパタリと倒れてしまったツルマル様。もう立つことは無いと覚悟をして、顔に傷がつかないようにメンコ(覆面)をしました。
しかしその後、突然立ち上がって馬場を全力疾走したツルマル様。しりあるさんもこんな事は経験したことがないそうです。
その後、再び倒れて「今度こそ……」と覚悟をしたのですが、もう一度立ち上がったツルマル様。なぜかは分かりませんが「ツルマルボーイ様と一緒に歩かなければならない」と思い、パドックのように輪っかをかいて一緒に歩きました。
時刻は朝の8時過ぎ。ツルマル様は脚取りも軽やかに進みます。このとき、しりあるさんの感情はめちゃくちゃで頭が混乱していましたが、これが最期の引き馬になることは何となく分かっていました。そして、最期は笑顔で一緒に過ごすと決めていたそうです。
その後、1周歩いた後に突然立ち止まったツルマル様。引き手を離すとその場に倒れた後、寝ながら4本の脚を使い、全力で走りました。しりあるさんにはその様子が、パドックから本馬場に入場したときの光景に映ったそうです。走りを止めたツルマル様は穏やかな顔で永い眠りにつきました。
最期の瞬間まで、こちらの想像を超えて来たツルマル様。一緒に過ごした10年間は一生の宝物、一生の誇りだといいます。
この出来事を心の中にしまっておくことも考えたそうですが、ツルマル様が最期の一瞬まで必死に生きて、最期の一瞬まですごかったことを伝えたかったしりあるさん。俺様気質だけと寂しがり屋、独占欲が強く甘えん坊だったツルマル様。しりあるさんは「人生の中でこれを超える出来事はもう無いと思う……」と話します。
コメント欄には「涙なしには見られませんでした」「立派な旅立ちでした」「ツルマルボーイ号、最期まで誇り高き馬生でしたね。ありがとう。そして安らかに」「泣いてしましました。立派な最期だったのですね」「大往生だよちゅる様。天国でたくさん走ってくれ」「大好きな人にお手入れしてもらえて、遊んでもらえて、最期まで寄り添ってもらえて、幸せでしたよね。メンコつけたら全力疾走って、競走馬時代を思い出したのかもしれないですね。ツル様をたくさん見せていただきありがとうございました」といった声が寄せられています。
しりあるさんはYouTubeチャンネル「しりある【ツルマル様のシモベ】」と、X(Twitter/@tsurumarusimobe)に、馬たちのさまざまな動画や写真を投稿しています。
※同チャンネルの動画はスタッフと馬との信頼関係のもと撮影されています。馬と関わる際はクラブのスタッフの指示に従ってください。
動画提供:YouTubeチャンネル「しりある【ツルマル様のシモベ】」

