信頼の崩れはじめ──嫌悪へ変わる感情
待合室で一人、時間を潰しながら、私は過去の会話を思い返した。
「大丈夫」
「なんとかなる」
そう言っていた弘樹の言葉が、今では薄っぺらく感じられる。
事情聴取が終わり、警察官から説明を受ける頃には、驚きは嫌悪へと変わっていた。怒りよりも先に、冷めた感情が込み上げる。この人は、家族を守るために嘘をつき、盗みを重ねていたのか。それとも、自分の弱さから逃げただけなのか。
今まで一緒に積み上げてきたものが、音を立てて崩れていく気がした。家族だと思っていた。信頼していた。でも、このできごとをきっかけに私は、知らなかった夫の姿を知ることとなる―――。
あとがき:家族を信じていた、その前提が崩れた日
家族のために我慢し、支え合っていると信じていた日常は、ある日突然崩れ去りました。この第1話では、夫の万引きという事実よりも、「信頼していた相手が、何を考えていたのか分からなくなる恐怖」が描かれます。真緒が感じたのは怒りではなく、静かに冷めていく感情でした。
「夫が万引き」という衝撃的なできごとは、夫婦関係だけでなく、母としての覚悟を問う長い物語の始まりにもなってしまったようです。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: tenkyu_writing
(配信元: ママリ)

