くる病は、ビタミンD不足や何らかの代謝異常で骨の石灰化が妨げられる病気です。
成長期までの子供に発症する病気で、きちんと治療しないと骨格異常や低身長に繋がるおそれがあります。
乳幼児にも発症しやすい病気です。近年は日光浴や紫外線を避けるようなライフスタイルに変わり、ビタミンD不足が原因のくる病は増加傾向にあります。
今回はそんなくる病の予防について紹介しましょう
※この記事はメディカルドックにて『「くる病」とは?症状・原因・完治するのかについても解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
くる病の予後と予防方法

くる病は完治する病気でしょうか?
ビタミンDやリン不足が問題の場合は、正しい食生活などでこれらの成分を摂り続けることで、半年以内に症状の改善がみられます。
内臓機能など、遺伝性の問題が起因している場合は生涯にわたって薬を服用しなければならないこともあります。
日常生活での予防方法を教えてください。
まずは ビタミンDやカルシウムが不足しないように積極的に摂取することが大切です。このビタミンは食事のほか、日光に当たることで皮膚近くで生成されます。
ところが最近は紫外線の害悪が注目され、直射日光に当たることを過度に避けたり、常日頃から強い日焼け止めを塗る人が増えてきました。
ビタミンDを作る紫外線であるUVBはガラスを通さず、SPF8以上の日焼け止めを塗ると皮膚にも届きません。
日光に当たる目安は、夏場なら肘から下で1日約15~20分、冬場は30分。直射日光ではなく木漏れ日でもよいので外に出て浴びるといいでしょう。
食事はどのようなことに気をつければ良いですか
しめじやしいたけなどのキノコ類、カツオやサケなどの魚介類、卵黄にビタミンDが豊富に含まれていますので積極的に食べましょう。
また母乳のみで育てている赤ちゃんに対しては、ビタミンDシロップなどの栄養剤を与えるのも有用です。
最後に、読者へメッセージがあればお願いします
ビタミンD不足からくるこの病気は、近年増加傾向にあります。
日焼けを嫌って日光を避けたり、無理なダイエットをしたりするなどしてビタミンD不足になりがちな現代の生活では、意識的にビタミンDを摂ることが必要です。
特に妊娠中の女性は、自分の栄養不足が胎児及び生まれた後の新生児に影響します。ビタミンDや鉄、亜鉛など今の生活で不足しがちな栄養素を理解し積極的に補うことが、子供の健やかな発育に繋がるでしょう。
骨の形成不足であるくる病は本人が痛みなどで辛い思いをするほか、身長が伸びないなど発育不足にも発展しかねません。
バランスのよい食生活と適度な日光浴でビタミンDを補うよう心がけてください。
編集部まとめ

くる病は成長期までの子供に起こる、骨の石灰化異常による骨格異常です。
この病気の原因のほとんどがビタミンD不足によるもので、近年はライフスタイルの変化から、病気の発症が増えています。
ビタミンDを補うためには適度な日光浴と、ビタミンDが豊富に含有されている食材を食べることが必要です。
また母乳で育てている赤ちゃんはビタミンD不足になりやすく、お母さんは妊娠中から意識的にビタミンDを摂ったり、赤ちゃんを適度に外気浴させたりする必要があります。
硬く丈夫な骨は子供の健やかな成長にとって欠かせないものです。しっかりとビタミンDを摂って、子供の健康な発育を守りましょう。
参考文献
くる病|恩師財団済生会
増加する乳幼児の「くる病」|中野区医師会
くる病|一般社団法人 日本内分泌学会

