既婚者であるにもかかわらず「結婚していない」と偽り、女性と交際を続ける「独身偽装」が今年は大きな社会問題になりました。
2025年12月には、アプリで出会った男性が既婚者であることを隠して女性と交際したケースについて、東京地裁が「貞操権の侵害」を認定し、男性に約151万円の損害賠償を命じました。
真剣な交際や結婚を望む相手に対し、既婚者である事実を隠したまま関係を続け、時間と感情、場合によっては出産する機会すら奪う行為は、単なる恋愛トラブルにとどまらず、法的責任を問われる問題に発展する可能性があります。
とくに年末年始のように「家族と過ごす時間が増える」時期は、普段は見えにくい相手の生活実態が表れやすくなるタイミングでもあります。
独身偽装問題にくわしい稲生貴子弁護士の監修のもと、注意すべきチェックポイントを整理しました。(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)
●独身偽装が法的問題にまで発展
「独身偽装」とは、既婚者が自らの婚姻状態を隠し、相手に独身であると信じ込ませたまま交際する行為を指します。婚活アプリやSNSを通じた出会いが広がる中で、こうしたケースは増加傾向にあり、訴訟に発展する例も少なくありません。
相手方が独身と偽装していたからといって、必ずしも慰謝料請求が認められるわけではありません。しかし、婚姻状態を隠し、独身であると信じこませたうえで、性的関係があった場合に、貞操権が侵害されたとして慰謝料などが発生することがあります。
これまでも貞操権侵害を理由とする損害賠償請求は裁判上認容されており、2025年12月の東京地裁判決においても、「既婚者だと知っていたら交際しなかった」という女性の主張が認められ、「貞操権侵害」が成立すると判断されました。
裁判所が重視したのは、相手の婚姻状態が交際の意思決定に重大な影響を与える点です。判決では、男性の嘘によって、女性の将来設計や精神的利益が損なわれたと評価されました。
また、交際期間が4カ月と短期間ではあったものの、女性から独身であること、他に交際相手がいないことを確認された際に、積極的に独身であると嘘をついていたこと、複数回に渡り避妊せず性行為に及んでいることなどから、行為が悪質であるとして100万円を超える慰謝料が認められました。
このケースでは、男性側から突然LINEなどがブロックされ、一切連絡が取れなくなったことから、探偵を利用していました。そのため、慰謝料だけでなく、探偵の調査費用なども、男性側の負担とされています。
このように、独身偽装を理由とする貞操権侵害の訴訟では、数十万円から、場合によっては数百万円の賠償命令が出されるケースも目立つようになっています。
●年末年始に表れやすい「危険サイン」
女性側が何度も「結婚していないのか」「既婚者ではないのか」と確認しても、「独身だ」と言い張る男性は少なくありません。
ただし、年末年始は家族行事が多く、既婚者にとっては自由に動きにくい時期でもあります。そのため、普段は隠れている生活リズムの「異変」が表れやすくなります。
(1)長期休暇中に連絡が取りづらくなる
「家族との予定」を隠すため、連絡が極端に遅くなるケースがあります。「年末年始は忙しい」「実家に帰る」など、説明が抽象的で、具体性に欠ける点も特徴です。
(2)休日や夜の時間帯に会えない
家族と過ごす必要があるため、「平日昼間しか会えない」「夜の電話・ビデオ通話を避ける」といった行動パターンが目立つことがあります。
(3)自宅や実家を一切教えない
独身であれば、ある程度は生活環境を共有できるものですが、既婚者の場合、「自宅に招かない」「住所を言わない」傾向があります。「部屋が狭い」「散らかっている」などの理由をつけて、住居の話題を避け続けることもあります。女性が「家族にご挨拶したい」といっても、色々な理由を述べ断わるというケースもあります。
(4)スマホやSNSの不自然な扱い方
既婚者は「痕跡を残すこと」を極端に避けがちです。
「一緒にいるときにスマホを伏せて置く」「SNSであなたをフォローしない」「あなたの投稿に『いいね』を付けない」「SNSに既婚の痕跡がなく、子どもや配偶者の気配がまったくない」「浮気用のスマホを別に持っている」といった例が挙げられます。「SNSは全くしていない」と嘘をつく場合もみられます。
(5)質問すると生じる説明の矛盾
生活実態を詳しく語れないため、「家族構成が曖昧」「自宅の間取りが答えられない」「友人の話を避ける」など、不自然さが表れることがあります。

